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  • 建國軍、詔安に入城 汪精衛軍萬歲を絕叫 頭條新聞

    【澄海三十日發同盟至急報】分水關を占據した建國軍は福建省境突破の感激にひたる間もなくわが空軍掩護の下に膝までつかる沼澤地帶を一氣に越へ夕闇迫る午後七時頃遂に一兵を血塗らず省境附近の要衝詔安に入城した沿道には汪精衛軍萬歲、打倒蔣政權を絕叫する老若男女群を為し同地方において今までにない歡迎振りである

    社說 島都の交通機關と整備 將來の發展性を考慮し立案せよ 社說

    島內に於ける產業及び經濟界の飛躍的發達を反映して島都の人口は逐月增加の一途を示して居るが、その施設は膨脹率に比較して甚しく立遲れて居る感が深い。現在の如く人口四十萬では交通機關として市營バスのみに依って市民の利用に滿足を與へて居るかも知れないが、朝夕のラッシュ・アワーには壽司詰となっても乘り切れない狀態である。戰時下に於いて資材の關係でガソリンを始めゴムタイヤーの配給を統制して居る時代では、市當局に對し交通機關の不整備を理由として非難を浴せるのは當らないが、島都將來の發達性を考慮した塲合には、現在の如き市營バスのみを唯一の交通機關として頼って居る臺北市としては甚だしく寒心に耐へないものがある。

    南方國策の第一線に立つ本島として將來への發展を考慮した塲合、島都の人口は二十年を待たずして百萬を突破する趨勢にある事より推察されば、現在の島都市區計畫も餘りにもスケールが狹少ではないかと、將來百萬人や百五十萬人の市民を收容せんとすれば今より遠大なる計畫を立てねばならない。その前提としては市民の脚である交通機關の整備に邁進せねばならない。始めて本島を訪問した人士の均しく痛感する事は、島內各都市に於ける交通機關の不整備である。內地に於ける主要都市の交通機關の整備した現狀より見れば、島都は著しく立遲れて居る事である。かかる狀態を以て將來の大臺北市建設を期待する事が出來るであらうか?

    都市建設の第一條件としては交通機關の整備に待たねばならない。本島の如く水力電源の豐富なる地方に於いては交通機關として電車を利用すべき時代に到達して居る筈である。島都でも中心區域のみの交通機關として利用するのであれば市營バスのみに依って充分にその機能を發揮するであらうが、現在の如く松山や士林をも島都に編入せんとすれば、今より郊外人の交通機關整備方策を樹立せねばならない。臺灣も農業臺灣より工業臺灣への發展過程に入って居る島都も逐年膨大せんとして居る事を考へれば、現在の如く市營バスのみを市民の交通機關として滿足させるべき秋ではない獨り臺北市のみでなく全島各都市の交通機關に對し督府が率先して將來への發達を見越して遠大なる計畫を樹立せん事を切望するものである。

    島都に於ける市區計畫は逐年整備して來て居り島都の面目を保持する上には內地や朝鮮の都市に比較して遜色がないが、交通機關に於いては內地や朝鮮や滿洲の各都市よりも著しく立遲れて居る。大都市は人口の膨張に依て必然的に工業地帶や住宅地帶や商業地帶に分離する事となって居るから島都に於いて全島に魁けて郊外電車敷設の計畫を立てるべきが急務であり、市當局は勿論市會議員もこの見地よりして島都の交通問題に對し重大關心を持つべきであらう。

    ソ軍續續芬領に進入 ソ聯、タスを通じ發表 頭條新聞

    【モスクワ一日發同盟】ソ聯、アインランド開戰以來一切沈默を持してゐたソ聯政府は一日午前二時に至り漸やくタス通信社を通じソ聯軍はフインランド國境警備兵の武力挑發に對抗し三十日午前八時フインランドに進入目下フインランド領內十乃至十五粁の地點を進擊中なる旨發表した。

    【ヘルシンキ三十日發同盟】ソ聯陸軍の一部隊は三十日カレリア地峽國境を突破しフインランド灣に面した要港テリヨキ市を占領した尚ヒルスレー、カエアナセンケの二地點においてもソ聯軍は國境を突破したと報ぜられる。

    社說 教員の貧困と根本對策 自給自足を目標に急げ 社說

    軍需產業方面への轉向と、大陸への進出を直接原因とする初等教員の大量不足は、ここ兩三年來殆ど全國的の問題となり、各關係當局をして少からず困惑せしめてゐる。殊に本島の如きは、年年五、六百名の不足がありその補充を內地に仰いでゐる關係上、更に一層の困難を來してゐる。本年は不足五百名を內地から募集したところ、苦心慘憺して漸く所要の數を揃へ、若し萬一不足の塲合は窮餘の一策として、全島四師範の演習科最高學年四百餘名を、實習の形式で繰出す最後の切札まで用意したなど、可なり文教局を狼狽させた。本年の苦い經驗に鑑み交教局では來年度の不足教員六百名募集のため既に石井視學官を上京させ、文部當局と折衝中であるが成績芳しからず、豫定通りの募集が困難である旨傳へられ甚だ寒心に堪えないものがある內地では來年からいよいよ義務教育の延長が實施されるとになり、教員の貧困はいよいよ深刻化し、到底本島に供給する餘裕はないものと見なければならぬ。從來の依存主義を清算して自給自足の對策を講ずることが焦眉の急務ではないか。

    文教局では教員不足並義務教育施行準備のため、來年度から二師範を新設すると同時に、現在四師範の演習科を增級し、更に師範生の學資補助、旅費等の支給を倍額にする等、優遇の道を考慮してゐるが頗る姑息的な手段と云はざるを得ない。と云ふのは今日の教員大量不足は、景氣不景氣が原因である。從ってこれが根本的對策は、待遇改善を措いては絕對に方策がないのである。吾吾は教職が聖なる天職であることを強調し教員に滅私奉公の精神を要望する。しかしながら教員また人間であることを無視するわけには行かない。事實小公學校教員が百圓の俸給を得るまでには、師範卒業後少くも二十年を要するのが常例である。しかも夫れは優秀な模範教員のみであるとされてゐる。師範學校二部の如きは、中學校卒業後三年を要し、これを三年制の高工、高商等の待遇に比すれば甚だ貧弱と云はねばならぬ。教員の待遇が他の一般官吏に比べて薄いことは否定出來ない。この一事に徵しても優秀なる中學卒業者が師範に向ふ道理はあり得ない。

    待遇を改善せずして僅かの學資や旅費の增額を以て果して教員不足の惱みを解消しうるだらうか。今日初等教員が數に於て不足を告げてゐるばかりでなく質に於て低下してゐることも事實である。交教局の統計によれば、兩三年來師範入學志願者が漸減の傾向にあり本年の如きは更に激減してゐる。一方現職教員の轉職は、當局必死の防止に拘らず著しく增加し、その結果正教員の不足を補ふ代用教員は漸次增加して、窮餘の結果教員として適確なりや否や、吟味の餘裕さへなく只空席補充にこれ努める時が來ないとも限らぬ。若しこの狀態が可成りの期間に亘るに於ては、本島初等教育上由由しき問題と云はねばならぬ增俸は九・一八停止令に牴觸するしかしながら教員の人的資源確保は、經濟的地位の改善より外に道はない。又待遇改善とは云ふものの今まで一般水準下に置かれてゐるものを水準までに引上げるまでのことだ。教育界に優秀な人材を導入し、興亞教育完成の為、吾吾は停止令に溫い解釋があって然るべしと思ふ

    心聲 漢詩

    冬日書懷/南都、後索居漫興 一/少奇、後索居漫興 二/少奇、後索居漫興 三/少奇、後索居漫興 四/少奇、後索居漫興 五/少奇、後索居漫興 六/少奇、後索居漫興 七/少奇、後索居漫興 八/少奇、後索居漫興 九/少奇、後索居漫興 十/少奇、先嚴小祥祭述哀/周定山、尋詩/黃景南、秋興/黃景南、李讚生課長五十双壽徵詩賦似/霞溪

    ソ聯の武力行使を ル米大統領が彈劾 國交斷絕に發展か 頭條新聞

    【ワシントン一日發同盟】ルーズヴエルト米大統領は三十日ソ聯政府宛に無差別爆撃回避のメツセージを送つたが續いて一日午後左の聲明を發表ソ聯の對フインランド攻撃を強硬な言辭もつて非難した

    ソ聯陸海軍のフインランド爆撃の報道はアメリカ政府並に國民に深刻なる衝撃を與へた紛爭を平和的方法により解決するために拂はれた努力を無視し遂に武力に訴へる道を選んだ法律、秩序に基く世界關係を繼續せんと希望してゐる凡べての國家國民は一致して今回の武力彈劾しよう武力が全世界の小國の獨立を不安ならしめ人類自治の權利を蹂躪すら現在の世界趨勢は世界の大なる不幸と云はねばならないフインランド國民並に其政府は長期に亘り名譽ある平和の記錄を有してゐるされば彼等がアメリカ國民及び政府から尊敬及び溫情をから得たのは蓋し當然である。

    【ワシントン一日發同盟】ルーズヴエルト大統領のソ聯非難のステートメントに就き消息筋では從來米國が外國に對して行つた非難や訴への內で今迄これ程痛烈極めたものは無いと云つて居り現在の事態では米國がソ聯との外交關係を斷絕する可能性は多分に有り右ス テートメントは斯る示唆を含んでゐると見てゐる一日記者團との會見に於ても斯る見地から

    一、米國はソ聯との外交關係を斷絕するつもりか

    一、駐ソ大使スタインハルト氏を召喚する意圖を有するか

    等の質問が出たが大統領はこれに關しては一切明瞭な返答を避け

    公式報告が來るまでは米政府は如何なる計畫も行動も決定しないだらう

    と多くを語らなかつた

    社說 資源の愛護は火災防止より 社說

    年に一回は循環して來る火災季節が來た。去る一日は全國防火デーであった。時局下に於ける國家資源の愛護、防火思想の普及涵養と消防施設の充實を圖るのが目的であった。本島でも同日各州廳に於て國防及び防火祈願祭を執行したり、消火又は避難の演習をしたり、講演會、映畵會、各戶の火元檢查等を實施する外、各新聞、交通機關、街路引幕、ポスター、ビラの配布等に依る凡ゆる宣傳を試みて十分火に對する警戒心を喚起し、防火思想を普及した筈である。然り而して冬と火事とは附き物で寒くなれば暖をとるため餘計火鉢等に親み、それが失火の因をなすことが多い。師走と正月は兎角火災の多い季節である。今島都に於ける本年一月以來、防火デーの前日までの火災件數は實に五十八件。その燒失した資源四十二萬三千圓に上ってゐる。戰時下資源の確保を叫ばれてゐる今日としては何と勿體ないことであらう。

    之を過去三箇年間に於ける全島の統計を見るに十一年度の火災件數は七二五件、損害額一、二八七、七○六圓。十二年度は火災件數八一九件、損害額九七六、一四九圓。十三年度は火災件數七一七件、損害額一、二三七、六○○圓であった。更に進んで全國火災統計を見るに十一年度は火災件數一八、一二五件損害額四七、三七七、五八六圓十二年度は一七、八四六件、四九、八四八、六六一圓の損害、十三年度は一七、三○八件、八一、六七○、五九三圓の損害であった。全國的には件數こそは減ってゐるけれども損害は却って遞增してゐる。年約六千萬圓の大資源を烏有に歸してゐる理である。幸に本島の火災件數は過去三箇年を通じて大體減じてゐる傾向であるがそれでも年に凡そ百二十萬圓の資源が燒失された勘定になってゐる。今火災原因別にた見た時全國的統計では弄が第一位、取灰、煙突、焚火、カマドの順になってゐるが本島の統計ではカマドが第一位を占め、焚火、煙突、弄火、煙草の火の順になってゐる。

    前記統計に現はれた莫大な國家的損害は資源愛護の折柄誠に勿體ないことである。銃後民としては防火デー當日のみならず常に自分達の務めとして始終緊張を續けることが何より肝要である。古來「水火無情」と云って一寸した不注意から自分の一族は離散し、家財道具は忽ちにして煙と消え、灰と化するのみならず隣家にまで災禍を齎らせた例は枚擧に遑がない。斯るが故に家每に戶每に火災の因をなすものの除去を怠らず、若し萬が一間違を生じた時は一刻も早く消防詰所又は警察局に速報することが第一である。之と同時に現在各地に於ける消防機關の充實強化並に消防組員及び之が補助機關の一旦緩急に處する訓練の徹底を期したいものである。島都臺北消防組では火事だとの報に接してより五分間で現塲にかけつけて水を吹き出せる計畫の下に消火栓の設備と消防組員の非常召集訓練をなして今では松山を除く市內の何れの一角より發火してもそれに對する用意は出來てゐる。島都に限らず全島各地共此種の設備と訓練ことがあって欲しいものである。

    心聲 漢詩

    代柬寄玄中兄(時有松山詩會)/翕庵、玄中老兄六十雙壽賦此以賀/筑客、寄翕庵/筑客、輓林老秋詞丈/李天民、秋懷四首/莊幼岳、秋懷四首 其二/莊幼岳、秋懷四首 其三/莊幼岳、秋懷四首 其四/莊幼岳、心社課題 秋蟬/李慶賢、心社課題 秋蟬/黃景南、心社課題 秋蟬/黃景南、心社課題 秋蟬/林錫牙、心社課題 秋蟬/劉萬傳、心社課題 秋蟬/李世昌、心社課題 秋蟬/杜世平、心社課題 秋蟬/經綸、心社課題 秋蟬/劍華、心社課題 秋蟬/林子惠、心社課題 秋蟬/李卜五、心社課題 秋蟬/杜坦齋、心社課題 秋蟬/洪陽生、心社課題 秋蟬/李嘯峯心社課題 秋蟬/李源振、心社課題 秋蟬/思齊

    秩父宮殿下御歸還 再度中支方面御視察から 頭條新聞

    【上海三日發同盟】昨年五月中北支、滿州を親しく御視察遊ばされた 秩父宮殿下には畏くも再度中支方面軍飛御編察のため、十一月廿五日東京羽田飛行場御發、同日午後六時上海に御着遊ばされた、 二十六日は午前藤田部隊に御成、藤田部隊長より管下の軍狀報告を御聽取遊ばされた後、支那方面艦隊旗艦出雲へ成らせられ、次で上海陸軍病院に傷病兵を御慰問ぼされ、更に西本願寺に成らせられ戰歿將兵の英靈に御參拜あらせられた、

    二十七日午前十時上海より空路同十時五十分南京に赴かせられ、支那派遣軍總司令部で西尾總司令官、板垣總參謀長以下各將星に對し謁を賜はつた後軍狀を御聽取あらせられたが恐れ多くも 殿下には南京に於ける在留邦人、支那民眾の生活に關する經濟問題について深き御關心を示させられ、種々御質問を賜つた趣きにて一同恐懼感激申上げた、それより 殿下には飛行機にて武漢方面に向はせられ二十八、二十九、三十の三日間に亘り武漢三鎮より北は信陽、西は岳州、南は南昌方面に到るまで詳かに御視察遊ばされ、二日午後再び上海へ御歸來、楠本興亞院華中連絡部次長より新東亞建設の狀況を御聽取、御行程を終へさせられ、三日午前九時空路上海御發、御歸還の途に就かせられた

    【福岡三日發同盟】中支戰線を御視察あらせられた 秩父宮殿下には三日午後零時十分太刀洗飛行場に御歸還、御少憩の後、再び飛行機で東上遊ばされた。

    空陸より呼應して 中條山脈の敵を猛攻 二萬の敵殲滅を待つ 頭條新聞

    【太原四日發同盟】中條山脈の峻嶮に據る曹萬順第三軍約二萬に對する大包圍殲滅戰は三日拂曉を期し烈風吹き荒れる極寒を冒して切つて落され各部隊は白雪積む險路を進撃又進擊○○北方の重松、荒木兩部隊は午後四時すぎ早くも聞喜東南方十五粁の地點に進出武田部隊も同時刻聞喜東北方十二粁の線に達しー方他の有力部隊は敵の側背に迫り大瀧部隊は戰車を先頭に敵正面より猛攻又大坪、森戶の兩部隊の巨彈は高田部隊の○○機の爆撃と呼應して敵據點を吹飛し三日夕刻には各部隊とも峨々たる中條山脈に迫り我が包圍圈は刻々と縮小して今や二萬の敵は袋の風となり殲滅の時期を待つのみとなつた

    社說 政黨政治復活の聲聞ゆ 社說

    近來政黨政治復活の聲が何處からともなく頻りに傳へられてゐる。これに伴って宇垣を首班とする政黨聯立內閣說が飛出し町田を主班とする民政黨內閣說が流布されてゐる。甚だしきは現內閣の閣僚補充工作に絡んで阿部首相があれ程執拗に町田總裁の出馬を懇請したのが、この間の消息を語るものであるといたし、更に町田總裁が毅然これを拒絕したのは明白の政黨內閣に對する見透しによるものであると誠に穿った觀察を逞しむ向きも少なくない樣子である。噂さはさて置き、現實の間題としてこの動きを見る時、現に民政黨が政友會の久原派と月曜會を組織し、兩黨聯繫委員の初顏合せが去る二日開催されたのである。これを以て直ちに政黨內閣の曙光と見做すことは聊かナンセンスに過ぎるものではあるが、政黨間に斯る動きのあることは□局柄注目を惹くに足る問題である。

    齋藤內閣以來累積して來た官僚政治に對する反感が阿部內閣に向って爆發せんとする形勢がこの頃政局の間隙を縫って隱現することは事實である。これは勿論時勢の然らしむるところであるが、阿部內閣それ自體に由來したものもないではない。永い間の官僚政治に輿論が抑制され、國民は沈滯と卑屈以外に何ものも酬ひられてゐない。過去の政黨政治下に國民の生活が官僚政治下のそれに比べて幾程得であったかは勿論疑問であらう又現下の政局に政黨政治が登塲しても果してよりよき結果が得られるとも思はれない。にも拘はらず政黨內閣は矢張り朗かであり國民との間に血の通ってゐる感じを與へるものである。この氣持は確かに政黨政治復活の空氣に作用してゐることは事實である。斯くて既に勃勃として動かんとする政黨を前に、阿部內閣は拙くも貿易省設置問題や閣僚補充工作等に於て遺憾なくその弱體振りを暴露し為めに組閣當初からその小物の寄集めであると看取した政黨者流は阿部內閣與易すしと窃かに隙を狙って來たところへ上述のやうな破綻を見せたから現內閣に對して即ち抵抗の弱いところへ攻擊が集中する如くに政黨の攻勢が形成されんとしてゐるのである

    勿論阿部內閣に對する政黨の攻勢と政黨政治の復活とは別物であると言へばそれまでであるが、過去の經驗に於て政黨は國計民生の為めよりも多くの塲合は黨略黨利の為めに動くものである。又單なる鬱憤晴らしの為に摩擦を覺悟して攻勢になるべく政黨は餘りに悧巧であり餘りに意氣地なしである。故に政黨の攻勢は客觀的情勢は別としてすくなくとも政黨の主觀的思惟に於ては矢張り政黨政治復活の意□が內在してゐると見なければならないであらう。問題はただ現在の政黨のだらしなさを以てして尚は政黨政治復活可能なりとするものがあれば、それは正しく天才か狂人でなければならない。國民は確かに明朗な政治、血の通った政治を希求してゐる。然しそれを現在の政黨によって與へられるとは誰も思ってゐない。そこで革新政黨待望の聲が起り、既成政黨の純理派が來る議會を解散に導き、而して一擧に革新政黨を作り政黨政治の復活に資せんとする企圖のある所以である。

    心聲 漢詩

    策軒君花燭誌喜/林述三、祝鄭文治詞兄令嫒出閣/林述三、讀雪滄詞兄澹廬贈傅鶴亭先生乃其次韻詩有感武其韻以博一粲時旅食島都/許文葵、次韻/傅鶴亭、過瑾園呈少英先生/雪滄、次韵/少英、訪怡園呈景山吟兄/雪滄、次韻/仙石、謹依原玉奉酬/景山

    唐王山、一五二七高地に 感激の日章旗飜へる 零下卅度の酷寒を冒し 頭條新聞

    【太原五日發同盟】中條山脈の天嶮に據る二萬の敵匪掃蕩の重松、荒木、森戶の各部隊は零下三十度の酷寒を冒し四日黎明より愈々最高峯地帶に向つて攻撃を開始し正午には早く白□々たる唐王山並に千五百二十七高地を占領感激の日章旗を揭げた又武田、大坪の兩部隊は○○に進出敵第三軍を包圍圈內に押込め大瀧部隊は得意の快速を利用して逃げ惑ふ敗殘匪を急追□捉し○○平地の隨所に構築せる敵防禦陣地を徹底的に粉碎多大の戰果を收めでゐる尚三日敵に與へた損害は敵遺棄死體六百五十二、捕虜八、鹵獲品多數であつた。

    社說 米穀增產と嘉南大圳の改善 社說

    最近戰時食糧確保政策の重大化は米穀の供給不足によって益益拍車を掛けられて來たので、臺灣としては此の際出來るだけ斯かる國策の線に沿ふて米穀の增產に努力すべきは言を俟たない。殊に來年一期米の增產は昭和十五米穀年度の端界期に對する補給米として、恰かも大旱の雲霓を望むが如きものとして最も待期せられてゐるので、督府としても渦般全島勸業課長會議を開催して其の生產目標を五百一萬石とし、稻作面積を一萬二千甲を增加せしめる事となったのである。然し臺灣の實力から見て昭和十四年の二期米五百六萬石を加へて年產一千七萬石の生產計畫は、幾分內輪に立てられたものとしてゐるのではないかと思はれる。

    茲に於て我等は嘉南大圳區域內に於る輪作問題の改善によって來年一期米の增產策を提唱せざるを得ない、周知の如く現在南大圳區域內の三年輪作方法は、全區域十五萬甲より特殊區域を差引いた約十二萬甲の土地を每年三小區に等分し、一小區に甘蔗作(一ヶ年半もかかる)一小區に夏季單期稻作(半ヶ年)一小區に甘藷等の雜作(一ヶ年)を循環式に行はれてゐるが、若し二年輪作に改革すれば一ヶ年半もかかる甘蔗作と單期稻作しか合理的に行へず、其の間雜作を取入れる事は頗る困難であらう。それ故每年七八月頃に早植する甘蔗作を半分即ち四萬甲の內二萬甲だけ十一月迄延期し其の間稻作を行へば上記二年輪作と同數量の米穀を收穫する事が出來るのである。即ち從來の三年輪作は三年每に稻作一作に對し、二年輪作は二年每に稻作一作となり、上記甘蔗の遲植によって三年每に稻作一作半となるので、現在の機構を其の儘維持しながら二年輪作と同一効果を擧げる事が出來る譯である。而して水稻二萬甲の收量を甲當十五石とすれば安安と三十萬石の米穀を增產せしむる事が出來るのである。

    所が此の問題を實施するには先づ嘉南大圳にそれだけの灌漑水があるか何うかといふ事である。言ふ迄もなく同一土地に對する給水は土壤の滲透性を利用して年月の立つに從ひ或る限度までは其の水量を減じても差支へない事は學理及事實によって證明された來たので、現在の嘉南大圳の給水量は優に二年輪作を賄ふ事が出來る事は關係技術者の認める所である。況んや從來甘蔗區域に對しても小量の灌溉水を要してゐるので、水稻作二萬甲に對しては充分に給水し得る餘力あるは明かである。其の次は甘蔗作の遲植によってどれ丈の減收を來すかといへば、一般では約二割位の減收と見てゐるし、現に臺中州下では十一月植の甘蔗は肥培の如何によって二割以下に喰止める事が出來るとの事であるが、假りに二割減として甘蔗の減收斤量は四億斤にして步留平均一割二分として約四十八萬擔の砂糖の減產となる。而して一擔の價格十三圓(稅拔き)として其の生產減が六百廿四萬圓に對し、米三十萬石を一石四十圓として一千二百萬圓の生產增となるので、國家經濟から見れば結局米穀增產に利用する方がより有利だとする計算になるのである。

    勿論日滿支三國全體の砂糖需要量から見て砂糖も供給不足であるが、米穀は現在外米を輸入せねばならない現狀では米穀の供給確保を第一とし、支那に對する砂糖の供給不足は爪哇糖を輸入する方法があり、否從來支那に於ける需要の大部分は爪哇糖に依存してゐる關係上、同じ供給不足ならば寧ろ割安な爪哇糖を以て補充し主要食糧たる米穀は出來るだけ國內の增產に俟つべきは今改めて喋喋する必要はなからう。殊に砂糖四十八萬擔の減收は更に他方面の畑地に於て增植する方法もあるので、督府の奮起と製糖會社の理解的諒解の下に此の問題を合理的に解決し得るのである。我等は米穀問題の重大化に鑑み應急的處置として甘蔗一部の遲植を強調せざるを得ない。

    稅制の全般的改正 大藏省より要綱發表 頭條新聞

    【東京六日發同盟】五日の閣議で可決された稅制改正の要綱左の如し

    國稅

    一、所得稅

    分類所得稅

    一、分類所得稅は所得を左の四種に區分して個人に對し課稅すること但し配當利子所得に付ては法人の受くるものに付ても課稅すること

    不動產所得、配當利子所得事業所得、勤勞所得

    二、課稅客體 イ、不動產所得は土地、家屋及不動產上の權利の賃貸等に依り生ずる所得とすること

    ロ、配當利子所得は左に揭ぐる所得とすること

    甲 稅法施行地に於て支拂を受くる公債、社債若は預金の利子又は貸付信託の利益及稅法施行地に本店又は主たる事務所を有する法人より受くる利益又は利息の配當、剩餘金の分配に依る所得等

    乙 營業に非ざる貸金の利子並に甲に屬せざる公債社債若は預金の利子又は貸付信託の利益及法人より受くる利益若は利息の配當又は剩餘金の分配等

    ハ、事業所得は左に揭ぐる所得とすること

    甲 農業、山林業、畜產業及水產業等より生ずる所得

    乙 現行營業收益稅を課せらるる營業の所得、地方營業稅を課せらるる營業の所得及鑛業砂鑛業の所得等

    丙 自由職業等より生ずる所得及他種に屬せざる所得

    ニ、勤勞所得は俸給、給料、歲費年金、恩給及此等の性質を有する給與とすること

    三、課稅標準 イ、不動產所得は收入金額より必要經費を控除したる金額に依ること

    ロ、配當利子所得は收入金額に依ること

    ハ、事業所得は收入金額より必要經費を控除したる金額に依ること

    ニ、勤勞所得は收入金額に依ること

    四、免稅點又は基礎控除

    イ、不動產所得に付ては百圓程度の免稅點を設くること

    ロ、配當利子所得乙に付ては百圓程度の免稅點を設くること

    ハ、事業所得に付ては四百圓程度の基礎控除を認むること

    ニ、勤勞所得に付ては六百圓程度の基礎控除を認むること

    五、扶養控除 不動產所得事業所得及勤勞所得に付ては妻及扶養家族一人に付百五十圓の百分の八に相當する金額を稅額より控除すること但し總所得五千圓程度以上の所得者には控除を認めざること

    六、稅率

    不動產所得 百分の十

    配當利子所得 百分の十但し國債の利子に付ては百分の四地方債の利子に付ては百分の九とす

    事業所得 營業所得百分の八・五

    其の他 百分の七・五但し事業所得の金額が千圓程度以下なるときは百分の六とす

    勤勞所得 百分の六

    七、元本一定額以上の銀行貯蓄預金產業組合貯金等の利子に付ては稅率を輕減して課稅すること

    八、山林所得に付ては稅率を或る程度輕減すること

    九、一時恩給及退職給與に付ては分類所得稅のみを課することとし左記程度の超過累進稅率に依り課稅すること

    二萬圓以下の金額百分の六

    二萬圓を超ゆる金額百分の十二

    十萬圓を超ゆる金額百分の二十五

    五十萬圓を超ゆる金額百分の四十

    十、徵收方法 イ、配當利子所得甲及勤務所得(使用人一定數以下なる個人の使用人の受くる給與及稅法施行地外より受くる給與を除く□に付ては源泉課稅の方法に依ること

    ロ、其の他に付ては原則として前年中の實績に依り賦課徵收すること

    ハ、法人の受くる配當利子所得に付源泉課稅に依り徵收したる稅額は法人稅額より之を控除すること

    一般所得稅

    一、一般所得稅は個人に付各種の所得を綜合し所得金額中五千圓を超ゆる部分に對し左記程度の超過累進稅率に依り課稅すること

    五千圓を超ゆる金額 百分の十

    八千圓を超ゆる金額 百分の十五

    一萬二千圓を超ゆる金額 百分の二十

    二萬圓を超ゆる金額 百分の二十五

    三萬圓を超ゆる金額 百分の三十

    五萬圓を超ゆる金額 百分の三十五

    八萬圓を超ゆる金額 百分の四十

    十二萬圓を超ゆる金額 百分の四十五

    二十萬圓を超ゆる金額 百分の五十

    三十萬圓を超ゆる金額 百分の五十五

    五十萬圓を超ゆる金額 百分の六十

    八十萬圓を超ゆる金額 百分の六十五

    二、公社債、銀行預金の利子及貸付信託の利益等に付ては收入金額の四割を控除して綜合課稅すること但し當分の內納稅義務者の申請ありたる塲合は綜合課稅に代へ百分の十五程度の稅率に依り利子支拂の際課稅するの途を講ずること元本一定額以上の銀行貯蓄預金產業組合貯金等の利子に付ても右に準ずること

    三、株式配當に付ては二割控除を廢止し株式取得に要したる負債利子を必要經費として控除すること

    四、法人の清算分配金中拂込額を超過する金額等は之を□益の配當と看做し他の所得と別個に課稅すること

    五、個人の營業所得の計算上臨時利得稅は當該年分の利得に對する分を控除すること

    六、總所得一萬圓以下なる者の勤勞所得に付ては一割程度の控除を認むること

    七、生命保險料の控除は之を認めざること

    八、各種の所得を通じ原則として前年中の實績に依り課稅すること

    九、一般所得稅は前各項に定むる事項の外大體現行第三種所得稅の例に依ること

    二、法人稅

    一、法人に付ては法人稅を課することとし現行の第一種所得稅、法人營業收益稅及び法人資本稅は之を廢止すること(現行超過所得稅は臨時利得稅に統合すること)

    二、法人稅は法人の所得及び資本に對し課稅すること

    三、法人の所得の計算上法人稅は之を損金に算入せざること法人稅の課稅所得に當該事業年度の利得に對する臨時利得稅を控除したる殘額に依ること

    四、前事業年度(事業年度の期間六箇月なる時は前二事業年度)に生じたる缺損全額は現事業年度の所得計算上之を損金に算入すること

    五、法人稅の率は大體左記程度とすること

    所得金額の百分の十八

    資本金額の千分の一・五

    稅法施行地に本店又は主たる事務所を有せざる法人に付ては所得金額の百分の二十八程度とすること

    六、現行清算所得積立金及び不課稅所得より成る部分に對しては法人稅を課稅せざること

    七、法人の受くる配當及び利子に對する分類所得稅は法人の所得に對する稅額より之を控除すること

    八、法人稅は前各項に定むる事項の外大體現行の第一種所得稅及び法人資本稅の例に依ること

    三、臨時利得稅

    法人臨時利得稅

    一、法人に付ては臨時利得稅と超過所得稅とを統合して課稅すること

    二、法人の利得は利益中基準利益率を超ゆる金額及び資本金額(積立金を含む)の年一割を超ゆる金額とすること

    三、法人の利得金額は之を左の各級に區分し大體左記程度の稅率に依り課稅すること

    資本金額の年一割を超え基準利益率以下の部分百分の二十五基準利益率を超え資本金額の年三割以下の部分百分の四十五資本金額の年三割を超ゆる部分百分の六十五

    資本金額十萬圓以下なる法人に付ては右の稅率を各百分の十程度輕減すること

    四、法人の基準利益率は昭和九十、十一の三箇年(現行乙種利得の基準年度)の平均利益率所得に依ること但し平均利益率なきとき又は平均利益率年一割未滿なるときは年一割を以て基準利益率とし平均利益率が年二割を超ゆるときは年二割を以て基準利益率とすること

    五、法人の利益の計算上法人稅及臨時利得稅は之を損金に算入せざること

    個人臨時利得稅

    一、個人に付ては甲種利得を廢止し昭和九、十、十一の三箇年(現行乙種利得の基準年度)の平均利益を超ゆる部分の利益を利得とし百分の三十程度の稅率に依り臨時利得稅を課稅すること

    二、平均利益なき者又は平均利益が現年度の利益の三分の一に相當する

    金額□七千圓未滿なるときは七千圓□に達せざる者に在りては現年度の利益の三分の一に相當する金額七千圓未滿なるときは七千圓を以て平均利益とすること

    三、個人の現年度の利益一萬圓未滿なるときは臨時利得稅を課せざること

    四、個人の利益の計算上臨時利得稅は之を必要經費に算入せざること

    四、相續稅

    一、相續稅に付ては純稅額に於て大體三割程度の增徵を行ふこと

    二、相續財產の價格五萬圓程度以下の家督相續第一種等に付ては被相續人の扶養家族一人に付千圓程度の控除を認むること

    五、鑛業稅

    一、鑛產稅及特別鑛產稅の制度は之を廢止し鑛業の所得又は純益に對し一般の例に依り課稅すること但し時局に緊要なる重要鑛產物の採掘事業に對しては重要物產製造業に對する免稅に準じ免稅すると共に當分の內稅率を或る程度輕減すること

    二、鑛區稅、砂鑛區稅及特別砂鑛區稅は大體現行通とすること

    六、利益配當稅

    利益配當稅に付いては配當金中配當率年一割以下の部分に對する課稅を廢止すること

    七、外貨債特別稅

    一、外貨國債に在りては利率年四分(現行五分)を超ゆる利子額、外貨國債以外の外貨債に在りては利率年四分五厘(現行五分五厘)を超ゆる利子額に付外貨債特別稅を課すること

    二、稅法施行地に住所を有し又は一年以上居所を有する者の所有する外貨債の利子に付ては證券が本邦內に在らざる塲合と雖の外貨債特別稅を課すること

    八、特別法人に對する課稅(未確定)

    產業組合、商業組合、工業組合等の特別法人に對し其の剩餘金及配當利子所得に付或る程度の課稅を為すこと

    九、酒稅

    一、酒類に關する各稅法(酒造稅法)、酒類及酒精含有飮料稅法、麥酒稅法、支那事變特別稅法中酒類の物品稅に關する規定等)を單一稅法に統一すること

    二、課稅方法に付ては造石稅制度と庫出稅制度とを併用すること

    三、各種類間の負擔の均衡を圖り總稅額に於て大體三割程度の增徵を行ふこと

    十、清凉飮料稅

    清凉飮料稅に付ては玉ラムネ以外のものに付總稅額に於て大體三割程度の增徵を行ふこと

    十一、砂糖消費稅

    一、色相課稅制度を廢止し製造方法課稅制度を採用すること

    二、總稅額に於て大體二割程度の增徵を行ふこと

    十二、織物消費稅

    織物消費稅に付ては稅率を百分の十程度現行百分の九に引上ぐると共に免稅範圍を整理すること

    十三、揮發油稅(未確定)

    揮發油稅に付ては相當程度の增徵を行ふこと

    十四、取引所稅

    取引所營業稅

    一、取引所營業稅を取引所特別稅(假稱)と改稱し其の稅率を手數料收入金額の百分の十二程度(現行百分の十六・五)に改め附加稅は之を認めざること

    二、取引所の所得又は純益に付ては一般の例に依り法人稅及營業稅を課すること

    三、會員組織の取引所に付ては取引所特別稅及營業稅を課せざること

    取引稅

    株式の賣買取引に對する稅率を短期萬分の五(現行萬分の四長期萬分の七現行萬分の六)程度に引上ぐること

    十五、通行稅

    一、乘車船區間四十粁を超へ五十粁未滿の三等乘客に對しても課稅する

    二、稅率を相當程度(三等、三錢乃至十錢程度)に引上ぐること

    三、急行料金及寢臺料金に對し一割程度の課稅を行ふこと

    十六、入塲稅及特別入塲稅

    一、劇塲、活動寫真舘等の入塲料に對する免稅點を十九錢程度(現行二十三錢)に引下ぐると共に一圓以上の入塲料に對する稅率を相當程度引上ぐること

    二、舞踏塲、ゴルフ塲等の入塲料に對する稅率を相當程度引上ぐること

    三、特別入塲稅に付ては免稅點を十九錢程度(現行二十三錢)に引下ぐること

    十七、物品稅

    一、左に揭ぐる物品に對し新に物品稅を課すること

    象牙製品、七□製品、琥珀製品一定價格以上の菓子、愛玩用動物、盆栽、化粧石鹼及綠茶並に煉齒磨及水齒磨

    二、第一種甲類及第二種甲類の物品に付ては稅率を百分の二十程度(現行百分の十五)に引上ぐること

    三、飴類に對する稅率を百斤に付五十錢程度引上ぐること(現行麥芽飴一圓五十錢、その他二圓)

    十八、遊興飲食稅

    一、藝妓の花代に對する稅率を百分の三十程度(現行百分の二十)その他の花代及花代以外の料金に對する稅率を百分の十五程度(現行百分の十)に引上ぐること

    二、免稅點を三圓程度(現行五圓)に引下ぐること但し藝妓の花代を伴ふ料金及カフエー等に於ける料金に付いては免稅點を設けざること

    十九、骨牌稅及狩獵免許稅

    骨牌稅及狩獵免許稅に付ては相當程度の增徵を行ふこと

    二十、地租

    一、地租の稅率を賃貸價格の百分の二とすること

    二、賃貸價格五圓未滿のものには地租を課せざること

    二十一、家屋稅

    一、家屋に付ては國稅として賃貸價格の百分の一・七五の家屋稅を賦課すること但し昭和十七年度より之を實施すること

    二、家屋賃貸價格調查法を制定し大體昭和十五十六の兩年度に於て家屋賃貸價格の調查を行ふこと

    二十二、營業稅

    一、營業稅は營業の純益に對し百分の一・五の稅率に依り賦課すること

    二、營業稅は大體現行營業收益稅の例に依るも現在地方營業稅を課せられつつある營業及法人の漁業等に付ても課稅すること

    三、營業の用に供する土地又は家屋に付納付したる地租又は家屋稅(國稅)は營業稅より之を控除すること

    二十三、各種免稅の整理

    現在特別法に依り所得稅及營業收益稅を免除しつつある事業に對してはその開業又は許可の年及其の翌年より一定年間は其の全部の利益に對し所得稅、法人稅及營業稅を免除することとし殘餘の免稅期間は利益中利益率年一割迄の部分に付てのみ免稅し利益率年一割を超過する部分に對しては課稅することに改むること

    廿四、臨時租稅措置

    一、法人の留保所得を生產設備の擴張又は國債等の購入に運用したる塲合に於ける課稅輕減の制度を相當程度擴張すること

    二、海外企業の所得に付ては法人稅の稅率を相當程度に輕減すること

    三、重要鑛物の採掘に付ては現行重要物產製造業に對する免稅の例に依り採掘開始の年及其の翌年より三年間所得稅、法人稅及營業稅を免除すること

    四、時局產業が用に供する固定資產に對する減價償却年限の短縮を舊設備にも及ぼす等國定資產減價償却是認範圍の擴張に付考究すること

    五、同族事業會社に對しては同族保全會社と區別し加算稅の課稅を相當緩和すること

    社說 內臺司法制度の統一 統治上解決すべき重要問題 社說

    內臺司法制度の統一問題に關しては本島法曹界に於ける永年の懸案であり、また本島文化の進むに從ひ、各種の公法私法の內臺共通施行に依ってその解決の必要を益益な痛感するのである殊に最近本島に於ける皇民化運動の著しき成果を擧げ、今や法制上その最も難問題と云ふべき本島人の親族相續關係事項も民法の親族相續篇を多少の例外を設けて近く本島人に適用する機運に進んできた今日、內臺司法制度統一の解決時期も遠い將來の問題ではなく、また內臺識者要望の聲も日を逐うて漸次高まってくる情勢にある

    現在わが臺灣の統治制度は、所謂立法、司法、行政の三權分立たる立憲方式に據らず、司法權を行ふ法院は臺灣總督に直屬し、判官は臺灣總督之を補職する制度になってゐるから、法制上最高行政機關たる臺灣總督は一方において律令を制定する特別立法權を掌握し、他方において法院たる司法機關を直轄する三權合一の特殊統治制度になってゐるのである。然るに我が國は立憲法治國として統治の對象たる一般民眾の生活上最後信賴すべきものは云ふまでもなく、獨立なる司法權にある。殊に外地統治において新附同胞を真に絕對信賴せしめ得るや否やは一に神聖なる司法裁判權の運用如何に緊ってゐるといふことは云ふまでもないのである。また神聖なる司法裁判權は獨立なる司法機關の確立を待って保障せらるべきものである。故に司法獨立、言ひ換へれば內臺司法制度の統一に對する要望は臺灣統治の根本核心に觸れる重要問題ではあるが、しかし從來においては容易にこれを實現すべき望みがないのである。

    理論上より見て、臺灣統治方策は內地延長主義にある以上、一日も早く裁判所構成法を臺灣に施行し、島內に地方裁判所、控訴院を置き、上告審は大審院に直轄し、或は大審院支部を設け、その他裁判官の人事事項はすべて司法省に所屬せしむるべきである。斯くの如き內臺司法制度を統一する事に依って、本島の司法獨立問題も始めて根本的に解決せられ、所謂內臺一如の統治方針も始めて貫徹され得るのである。ただ豫算上特別會計と一般會計との關係を如何に處理すべきかとの問題もあり、又臺灣と朝鮮とを各別に考へるべきかとの問題もあるが、然し要するところは新臺灣建設に邁進しつつある現狀に鑑み、且つ內臺一如の統治方針に照して、內臺の司法制度を一日も早く統一すべきものであるといふ根本原則をさへ樹立されたならば、その他の問題は自ら解決すべき途が見出され得るものであると信じて疑はない。

    心聲 漢詩

    旅懷/臺東 王養源、旅懷 其二/臺東 王養源、旅懷 其三/臺東 王養源、輓林幼春先生千古/蔡希顏、訪陳如璧老兄/花蓮港 鄭郁仙、次韻/花蓮港 曾東農、次韻/賀田 陳如璧、祝皇軍大捷/鄭郁仙

    中條山脈の敵を猛攻 殲滅は時間の問題 頭條新聞

    【太原七日發同盟】東部中條山脈の峻嶮を怒濤の如く進擊してゐる重松、荒木兩部隊は六日朝來一五八六高地鞍部及び灣山鎮南方高地線に據り最後の抵抗を試みてゐる敵に對し壯烈な攻撃を加へ一方武田部隊の主力は大嶺上においてまたその一部は柳家村において夫々頑敵を撃攘し兩地を占領した後荒木、重松兩部隊は協力して一五八六高地の敵を攻擊中で今やその殲滅は時間の問題となつてゐる。

    社說 政府、政黨の協力を要請 社說

    政府は鐵、厚兩相の補充及び四參議の補充增員に依って、その陣容を整備して事變處理の新段階に對應すべき態勢を整へたが、阿部首相は去る四日在野五黨首の來訪を求め、時局拾收に就き各政黨の協力を求め、事變處理に對する政府の方針等を中心に、各黨首と隔意なき懇談を遂げた結果、五黨首側は政府の熱意を諒とし、この際政黨側でも積極的に協力すべきであるとの意見に一致した模樣で、近く政府に對する協力の態度を何等かの形式で闡明すべく、五黨首の聲明或は申合せ又は來議會劈頭院議をもって決議をなすかは近く町田總裁より四黨首に提議する模樣であると傳へられてゐる。

    兩閣僚の補充問題を繞り、阿部內閣はその弱體ぶりを遺憾なく暴露したので、政府の體制は一應整備したものの、今後の政治運用上尚幾多の難關か豫想されるに至った。即ち政府の意圖せる事變の最終段階に對處すべき擧國一致體制の具現は、町田總裁の入閣拒絕に依って水泡に歸し、加之、政府と政民兩黨との關係は却って溝渠を生じた傾向を招來したため、政治季節を控へて政府の立塲は逆賭し難いものがある。政府は重なる失敗に依る信望回復のため、又議會政策のため、而して擧國一致體制の具現策として、懸命に在野各政黨との連繫を企て、町田總裁の閣外支援の一言に便乘して、遂に五黨首懇談が實現したのである。

    政府が在野各政黨と連繫せんとするのは、政黨勢力の背景をなす國民の總意を事變處理の上に反映せしめんとの意圖に出でたもののようであるが、しかし議會の開會を控へて多分に政府の對議會工作の色が濃厚であることは云ふまでもない。町田總裁引出しが不成功となった結果、政府の補充工作に伴ふ議會對策は、むしろ逆效果に陷ったかの觀があった。先づ參議の補充で御機嫌をとったもののこれをもって足れりとせず、町田總裁の閣外支援の言質を利用して、積極的協力を望むために、遂に五黨首との懇談が實現したのである。が多分策士秋田厚相の智謀から出たものであらうが、如何に政府が議會乘り切りに自信がなく、その對策に腐心してるかが解るであらう。果して政府期待の効果が擧げられるか否かは今後の推移に待たねば豫斷は出來ないのである。

    政府が政黨代表の入閣を求めたのも、又各黨首との定例的懇談會を開き、その積極的協力を求めんとするのも、單に阿部首相の政黨に對する認識を示すものだけではないのである。事變處理に於ける政黨の役割は好むと好まざるとに拘らず、何人も否認することが出來ない。革新的推進力だけでは一つの限界に達したことを認めざるを得ないのである。

    阿部首相が政黨に膝を屈したのは、政黨を介して、民眾の協力を求めんがためである。政黨と民眾とがどれ程の繫りがあるかは別問題として、兎に角、現實の政治勢力として政黨の存在を無視することが出來ないのである。一旦遊離した我國の內閣が再び地上に降りて來たことは政治的に重大な出來事であらねばならぬ。政府が積極的に政黨と協力の觸手を延ばしたことは、擡頭しつつある政黨復活の風潮に拍車をかけると共に、延いては政黨連繫問題にも影響を及ぼすものがあるとして、相當注目されてゐるのである。

    事變目的達成が眼目 豫算閣議終了後青木藏相談 頭條新聞

    【東京八日發同盟】青木藏相は八日の豫算閣議終了後明年度豫算について左の如く談話を發表した

    昭和十五年度豫算調整は曩に閣議で決定した豫算編成方針に基き物資、資金、勞力など に關する經濟諸方策との調和に特に意を用ひ戰時經濟の運營に支障なきやう細心の注意を拂つた從つて新規經費については極力不當な膨脹を避くるとゝもに既定經費について も十分檢討を加へ節減繰延べを實行したかくて昭和十五年度において新規に計上することゝなつたものは軍備充實に關する經費、臨時軍事費財源繰入、軍事扶助、傷痍軍人保護その他軍事援護に關する經費生產力擴充に關すち經費、貿易の振興に關する經費などで要するに事變目的達成を大眼目としたものである尚本年は昭和十五年度における物資 等の全般的見透しを立てる必要上次の議會に提出せらるべき臨時軍事費豫算の追加要求についても一般會計概算の審查と相並んで檢討を遂げ本日その概數につき閣議の決定を經た。【寫真は青木藏相】

    社說 アミ族青年の墮落に就て 社說

    本島に於ける高砂族は本島の先住民族であり、その人口も十四萬餘に上り、その分布狀態から所謂蕃界の廣汎なる地域よりして統治上頗る重要視されて來たことは當然の事に屬するが、從來蕃界の事情は殆んど一般社會から隔絕し、從ってその社會現象も何等關心を呼ばず、時偶關係當局の發表に依って、僅かにその存在を思ひ付くやうな狀態である。然し近年彼等の平地移住が促進され、社會經濟組織の複雜化に伴ひ、且つ彼等自身の文化向上に促がされて、漸次一般社會との交涉が頻繁になりつつあることは周知の通りである。この傾向は今後益益進展するものであることは勿論、可憐なる彼等が文化の恩澤に浴して一步步步皇國民としその資質を完成して往くことは望ましいことである。同時に彼等との接觸が頻繁になるに從って、彼等の社會事情も漸次一般社會の關心を呼び、その是非得失も自から社會の批判に上ることは必然の勢ひでもあり、又彼等の文化的向上を期待する見地よりして斯くあって然るべきである。

    最近の報道によると、花蓮港のアミ族が都市文化の空氣に接觸した為めに、青年層の間に怠惰性の者が續出し、娛樂に耽溺し徒黨を組んで巷に彷徨ひ、甚だしきは途に惡心を起して盜みを為して警察當局の厄介になる者も二、三に止まらないとのことである。利あれば害も亦これに伴ふことは人事の常である以上、教化された彼等が其反面に都市文化の害毒に感染する所謂中毒者の續出を見るに至ったことは敢へて不思議とするに足らないかも知れない。然しこれは為政者が彼等を導く初心ではなく、又領臺以來一貫した理蕃政策の豫期したことではあるまい。若しこれが單に過渡期の一現象に過ぎず、二三の不心得者の特殊な例に過ぎないとしても今後のこともあり、又これから益益都市文化との接觸が頻繁にならんとする他族の關係もあるから指導當局は矢張最善を盡して、その害毒を未然に防ぐ必要があるであらう。萬一これが一時的現象でなく、その社會事情の變革による不可避の一般的傾向であるとすれば、それこそ由由しき問題であり、社會問題としてこれに檢討を加へ、その拔本塞源的な對策を要すること言ふまでもないであらう。

    高砂族の原始的共產的氏族制度は領臺以來漸く崩壞の一途を辿って來たことは爭はれない事實である。それにしても時日尚淺く現在に於ては未だにその社會組織の有力なる因襲的紐帶になってゐる筈である。斯る社會に於ては所謂「働らかざる者は食ふべからず」と云ふとが生活の律則であり一方物質に惠まれざる山間僻地に住んでゐるから凡そ娛樂に耽溺して怠惰になることは先づあり得ないと想像される、況んやその為めに盜みを働くことは非常な例外と言はなければならない。にも拘らず彼等が遂にこれを犯すに至ったことは決して偶然なことではあり得ない故にアミ族青年層の墮落を目して單なる都市文化の中毒者と見ることは皮相なる觀察と云ふべく、又この問題が單に一地方の出來事ととして片付けるべく餘りに事情が複雜であり、性質が深刻であると言はなければならない。

    彼等の心事を汲んでやる親切を一般先進社會人が持って然るベきではないか。

    中央政府は近く實現 條件につき談判しつつあり 周佛海氏諸種の誤解に答ふ 頭條新聞

    【上海九日發同盟】汪兆銘派の中心人物の一人たる國民黨中央執行委員會常務委員周佛海氏は九日の中華日報に「中央政府組織に關して」と題し八千五百語に上る長文の論說を揭載し新中央政權樹立に關する諸種の誤解に對して答へる所あつた、要旨左の如し

    過般來中央政府の成立は双十節と言はれまた總理誕辰の十一月十二日と言はれ更に現在では來年一月一日說、或は中央政府組織計畫並に和平運動は失敗に歸した等と種種の憶測が橫行してゐる、果して失敗したであらうか右に就て余個人の所見を述べて見やう汪先生今次の運動は中央政府の組織が本來の目的ではない、中央政府の組織は和平運動の過程に過ぎず救國の一方法でしかない、去る十月余は東京に赴いた時に日本の各方面では皆余に對し中央政府成立の時期に就いて質問したがこれに對し余は次の如く答へた

    中央政府の成立は時間の問題ではなく條件の問題である條件さへ救國に足りれば我我は立所に組織に着手するが然らずんば延期される

    と余は日本の友人に吿げたが現在ではこれを我等の同胞に向つても訴へてゐる、これ汪先生の主張であり我我の立塲でもある然らば中央政府は何時になつたら成立するであらうか、中央政府は重慶の宣傳する如く失敗したのであらうか、また外間傳へられる如く停頓してゐるのであらうか、其處には停頓も無ければ失敗もない、我我は積極的に進行しつつあり日本の條件に就て談判しつつある、旣に述べた如く條件が中國の生存と獨立自由とを保有する能はずんば我我はこの事に當るものではない我等の目的は窮地に陷つた中國を救ひ出さんとするにあり條件が我等をしてこの目的を達成せしめること能はずんば我等何をもつて中央政府の組織を企圖しやうぞ、余は交涉の衝に當つてゐる、未だ二三の具體的の問題に就き一致點に達してゐないが漸次意見接近し遂には完全なる一致を見るであらう、これは單に可能なるばかりでなくその時期もまた遠くないであらう、要求の全部に對し談判完成せば中央政府は立所に組織され以てこれらの條件の真正なる使命を遂行することが出來るであらう、これを要するに中央政府を組織することは中國にとつて利益である、中央政府を組織することは必ず成功するであらうしそれは遠からず實現するであらう【寫真は周氏】

    社說 管理米買上と島民食糧 應急對策として外米を輸入せよ 社說

    最近管理米の買上成績が豫定額に達しないので種種なる促進議論が續出して居るが、冷靜に各產地に於ける買上事情を檢討すれば自ら解決する問題である本年度の內地と朝鮮の米作が平年作より幾分減收を示し、新米の出廻期であるにも拘らず、新米が出廻らないので食糧政策を達成する為めに臺灣米の積出方を要求して居る。本島としては去る十一月一日より米管令を實施して以來未だに一箇月を經過したのみであって、農民は今迄の取引方法と異って居るので、多小氣迷ふて居る。その為めに幾分手持籾を賣惜んで居る傾向があるが、本年二期丸糯米の如きは去る十一月中旬より十二月上旬迄は殆ど日照時間が三時間と續いた事がなかったので、折角收穫した籾でも乾燥が出來ない為めに、例年よりも出遲れて居り更に官鐵の貨車配給不足もその原因の一つと數へねばならない米價が變動するのを豫想し、思惑の為めに賣惜んで居るとの說があるが、一部の者のみであって島民の大部分は二期米價は最早變化がないものと見て買上げに應じて居り自家用飯米の補充問題を懸念して居る。

    當局として考究すべき事は一部農家がその手持籾を賣出さないのは單に思惑の為めであると見るのは淺薄なら觀察である。農家としては自家用の飯米迄が管理令の實施に依って買上げられる虞れがあり、ワザワザ飯米を買ふよりも自家用に必要の量を貯へてから殘った籾を賣出さうとの心理が介在して居る事を見逃す譯に行かれないのであるこの見地よりして管理米の圓滑なら買上げを行はんとすれば農家の飯米を安心の出來る樣に確保するのが急務である。最近の如く蓬莱米の栽培が普及し農家の食糧米である在來米が逐次減產を示しつつある趨勢に於いては農民をしてその日常飯米を安心して獲得の出來る方策を講究するのが捷徑の對策であると言はねばならない。母國が米の供給に不足して居る際に臺灣として率先して米を供給するのが義務である事に對しては島民の均しく認識して居る所である。

    買上來が豫定の如く出廻らない為めに買上、米價を引下げる事や強制出荷を命令するとの手段は萬已を得ない時の對策であり、傳家の寶刀を拔かない所に却って運用當局としての手腕がある。管理米の圓滑なる買上げを行はんとすれば、安い外國米を本島に輸入し農家が安心してその手持籾を賣出しても外國米を補充用に買へるとの確信を與へるのが米穀當局として考慮すべき對策である。その為めに多少の犠牲を受けるとして米穀局は甘受すべき事である。然るに本年度の外國米產地として知られるタイ國を始め佛領印度支那や英領印度の如きは未曾有の豐作であり、輸入價格も低廉であるから內地へ輸入するよりも一應臺灣に輸入してから、その代用にて蓬萊米や丸糯米を內地へ供給すれば、母國への食糧政策を達成する事が出來ると共に管理米の買上を促進し、農民をして安心して手持籾を賣出させる事にもなり、一擧三得である。

    米管事業を運用する為めに外國米を輸入せねば遂行の出來ない樣な姑息的手段では將來の運用が危まれるとの觀察を行ふ者も居るが米管事業の如き國家事業を遂行せんとすれば、急速にその理想を實現させる事は無理であり、島民の理解と協力を求めてから徐徐に其目的を達成すべきである、殊に產業政策の運用に對しては農民を對象として居るから極めて冷静なる態度を以て說明し、誘導せねばならない、單に一時の功を急ぐ為めに却って重要國策の遂行に支障を與へた實例もある。米管事業の運用に當っては島民の利害關係を慎重なる態度で檢討した上で遂行すべきであり。管理米買上げに對しては島民の食糧對策をも併せて考究せん事を求めるものである。

    大勢を洞察、兩民族の 提携促進に邁進せよ 南寧方面軍司令官白、李兩將軍に通電 頭條新聞

    【廣東十日發同盟】南支□□軍報道部十日午後一時半發表南寧來電に依れば南寧方面大日本軍司令官は本十日白崇禧、李宗仁兩將軍に對し左の如く通電せり

    白崇禧、李宗仁兩將軍に對する書

    一、大日本軍は蔣介石政權と佛領印度支那との交通線遮斷を唯一の目的とし南寧地方を占領せり

    二、我が南寧方面大日本軍は廣西省における白、李兩將軍の施設その政令の徹底とに多大の敬意を表しその經營の破壞を極力避けんことに留意し又兩將軍治下の一般民眾の生命財產とその幸福を保護せんことに十分の努力を效さんと欲す

    三、將軍は世界の大勢を洞察し起つて東亞における同文同種の兩民族提携の促進に邁進せよ

    四、將軍にして悟るところなく敢へて大日本軍に敵對せんとするに於ては何時にても全兵力を舉げて南寧奪回に進攻せよ我が南寧駐屯軍は努力以て將軍の五十萬の軍隊と對抗してなは克く戰捷を獲得する陸軍兵力と裝備と航空兵力と確信とを有するものなり

    五、將軍の部下にして南寧地方の戰闘において忠烈の戰死を遂げたる四千二百餘の戰歿勇士はこれを南寧中山公園に合葬し□□供養しあり乞ふ意を安んぜよ

    昭和十四年十二月

    南寧方面大日本軍司令官

    支那を搾取から解放し 日、滿、支連環を強化す 興亞委員會で可決 新秩序確立の基本方策 頭條新聞

    【東京十一日發同盟】興亞委員會第三回會議は十一日午前十一時より首相官邸に開會委員長阿部首相以下各委員出席去る十一月十七日の第二回會議で興亞院總裁より提出された東亞新秩序確立の基本方策その他經濟、文化問題に關する特別委員會の審議經過に關し各特別委員長より報告がありこれに對して二、三委員より質問があつたが 結局滿場一致答申案を可決し午後は喜多華北、津田華中、酒井蒙彊、水戶廈門各連絡部長官、柴田青島出張所長の現地實情說明あつて後これを中心に懇談を遂げ午後二時散會した尚答申案は直ちに興亞院において慎重研究の上諸方策を順次實行に移される筈であるが基本的問題である東亞新秩序に關する答申の基調は左の如くである。

    一、東亞新秩序は東亞の共同防衛、帝國主義的搾取機構の排絕、アジア的協同體制の樹立と新東方文化の昂揚をもおつてその根本的政策となす日滿支の連環關係の強化を實現すべきである又東亞に樹立さるべき新經濟體制は歐米帝國主義的搾取支配を排除するとともに日本自らの利己的獨占活動を抑制し列強の植民地的貪慾の壇上としての支那を轉じて東亞諸民族の共榮の樂土たらしめるとをもつて東亞新經濟秩序の眼目とせねばならぬ即ち名實共に近代的獨立國としての資格を具備せしむることは支那をして東亞樞軸の一柱として新秩序を分擔々行せしむるに缺くべからざる要件である日本帝國はこれがためには全面的支援と協力を惜まるべきものである然れども東亞の新協同體制は決して善意の第三國の正當なる國際的活動を排除せんとするものにあらずして東亞の文化的並に經濟的發展に對する好意ある協力が拒否せられる恐れはないのである

    二、支那事變遂行に依る尨大なる犧牲において日本の求める所は領土や賠償でなく實に東亞新秩序の建設にあるがこれが所以は他民族の征服と強力支配の方途は我が日本民族の胸奧に內在すら皇道的至上命令に適合しないからである蓋 し「不知策」に非ずして「知らす」とを以て本義とするとは我が皇道の根本原則であり同時に支那王道の理想でもあるからである、且つ八紘一宇の皇道よりする時東亞の地に一民族のみを對照として事功を急ぐは決して上々の經綸でなく民族主義發達以後の近代世界において民族意識を輕視するは危險多き世界政策なるを以て我が日本の世界經綸は必然諸民族の自主的聯合の指導者たるべき方向に選ばるべきであり、かくて日滿支三國の融合合作に依る東亞新秩序の建設こそ實に我が肇國の理想精神を恢弘してこれを先づ東亞大陸に奉公する所以に外ならない、右の如き東亞新秩序確立の基本思想を明徵ならしむるため政府は宜しく文武諸官に訓令し國內教育言論機關學術思想文化團體の活面並に各種國民的行事を通じ國民各層に浸潤透徹せしむべきであり、對外的にも諸種の方法を講じてこれを闡明した究極において日滿支三國の國民運動たらしむるが如く施策するを要する。

    社說 獨貨拿捕と我が態度 英國どう出るか 山陽丸けふ出帆 社說

    歐洲戰爭は勃發して以來この方既に三ヶ月も經過してゐるが世人の豫想に反して英佛側に於ても獨逸側に於ても、これと云ふ活潑な軍事行動に出なかった。陸上は所謂るマジノ線とジーグフリード線の對峙により積極的な軍事行動は當初から豫想されないが、空軍による襲擊も海戰も目立って行はれず、双方共に專ら經濟封鎖戰を取り文字通り持久戰の體制に移ってしまった。これは過ぐる第一次世界大戰の悲慘な苦い經驗に鑑み、双方共に戰闘による直接の犠牲を出來るだけ少くし、經濟封鎖によって戰爭を少くして目的を達しようとすることは云ふまでもない。ところがこの經濟封鎖が最近に於て手段を選ばぬことから、中立國の通商妨害戰にまでに惡化し、イギリスの東海岸に於ては盛んに中立國の船舶機雷に觸れ所謂觸雷事件が頻發し殊に照國丸の爆沒は我國に異常なる大衝動を與へてゐる。英國はこの機雷戰術を獨逸の所為なりとして、遂に去る五日獨貨拿捕令を實施し、獨逸から積出すものはその禁制品と否とを問はず一切これを拿捕する措置に出た。

    英國東海岸に於ける機雷敷設が獨逸側の所為であるかどうかは分らないが、假りに英國の云ふが如く獨逸が敷設したものとしても、其復報策は相手國たる獨逸に限定されなければならぬのに、何らの限度がなく無制限に單に獨逸に於て生產されたと云ふ理由のみで、相手國でもない第三國の船舶にまでこれを拿捕することは正當だらうか、英の獨逸封鎖は中立國の犠牲に於て戰爭を遂行するものであり到底許容されるべきものではない。更に注目すべきことは英國の非合法的な措置に對して獨逸は非常に激昂して居り、一層強硬な報復手段に出づべしとも傳へられ、今後の事態は極めて憂慮されてゐるのである、我國は勿論最近には伊太利も米國も夫夫對英通牒を發し、殊に伊太利の如きは武力に訴へても商權を確得するなど中立國の通商が蒙るべき脅威損害は更に增大しようとしてゐる。外務省情報部長の談話によれば「英國政府は獨逸產品の日本積出しに對しは何ら干涉しない」と言明して居るとのことであるが、英國の今回の措置は、前言を食んだ國際信義に悸る不信の所為と云はれても敢えて辯解の餘地はない。

    我國は曩に歐洲戰爭に介入せざる方針を闡明し、中立國たるの立塲を嚴守してゐるのであるが、これと共に中立國としての權益保持のため、飽くまで主張し貫徹せねばならぬことは理の當然である。帝國政府は現に數回に亘って嚴重抗議を發したに拘らず、未だ何ら滿足な回答がないが若し英國にして何等政治的特別考慮をなさず拿捕を強行するに於ては、我國としても勢ひ對抗手段を取らざるを得ない。英國の對獨封鎖は相手國の獨逸よりも中立國の蒙る損失が大きい。獨貨押收のみならず、わが國船舶の抑留も頻發を豫想され、斯くては我が對歐貿易は全く混亂乃至停頓に至るべきことは必定である。しかも現在獨逸の日本向け輸出商品は、工作機械その他であり我國の生產力擴充計畫と重大な關係にある。

    上述の通り歐洲戰は長期戰を免かれず、從って英獨の封鎖戰乃至通商破壞戰は極めて深刻とならざるを得ず中立國の影響また甚大と云はねばない。山陽丸は獨貨を積載していよいよ本十二日ロッテルダム港を出帆することとなった。英國が果して如何なる態度に出るか、吾吾は嚴重これを監視すればよい。

    心聲 漢詩

    懷櫟社死病諸友寄鶴亭了庵二詞兄/灌園、輓林老秋先生(下)/李石鯨、己卯秋日遊青草湖靈隱寺/尤人鳳、和韻/郭仙舟、步献三兄重遊武侯廟原玉/郭仙舟、在帝都寄宗兄呈續/黃額、呈黃呈續兄/王有芬、題麗珠女士玉照/景山、題麗珠女士玉照/浪鶴、題麗珠女士玉照/說劍、題麗珠女士玉照/仙石、謝題小影/麗珠

    臺灣から年度末迄 八十五萬石を移入 金光拓相、閣議で報告 頭條新聞

    【東京十二日發同盟】金光拓相は十二日の閣議で臺灣米の內地移入情況について大要 左の如く報告した

    臺灣米については本年度末までに八十五萬石の豫定數量を移入し得る見込みでめるたゞ臺灣では天候の關係から刈取りが遲れたため十一月中の移入豫定數量三十萬石は十五、六萬石に滿たなかつたが現在米穀以外の貨物の輸送を押へ米穀の輸送に全力を注いで米の積出しに全力を傾けてゐるのと十二月二十日頃までには豫定數量の移入をなし得る確信を持つてゐる尚船腹については目下の所不足はない。

    社說 鐵道輸送力の增大強化 芭蕉輸送中止に鑑みて 社說

    農林省では食糧間題の難局打開のため、去十一日農業團體首腦を招集して連絡會議を開き、懇談の結果生產團體としてはこの際政府の方針を支持し協力することは固よりのこと、進んで地方農村團體を督勵し、自主的米出荷促進運動を全國的に展開し、積極的に食糧問題不安の解消に努力する旨を申合せた。臺灣當局でも最近內地に於ける食糧問題の逼迫せる事情に鑑み、之が應急對策として臺灣米の內地移出を計って之を緩和しようと力めてゐる。然るに管理米の買上が百萬俵を突破してゐるのに移輸出米が僅かに五十萬俵しかないことは全島各驛に尚五十萬俵滯貨してゐる勘定になる。之がため督府米穀局ではさきに鐵道部に向って之が輸送特別配車を依頼したので同部でも直ちに關係課長の會合をなして右管理米の非常輸送計畫に關し、鳩首協議を遂げた結果、之が輸送に對し、優先的に配車することを斷行することとなったのである。

    鐵道部の管理米緊急輸送對策たる優先的配車は結局出荷中の臺中州下產バナナの輸送を中止してその貨車を全部米の輸送に振向けることである。內地中央部の食糧政策達成のため、バナナの輸送を中止されたことは時局下國策に協力する觀點よりすればその犠牲は生產者として甘受すべきである。その主旨に異存はないがバナナ輸送用貨車を全部振向けたのに對し、砂糖專用車は米の輸送に必要なるだけ、之に讓ることになってゐる樣だがこの先後緩急處置は必ずしも絕對的妥當なりとは首肯し得ない節がある。

    今バナナの出荷狀況を見るに十一月中已に十六萬籠を突破すること三千餘、之を前年同月に比し、約三萬籠の增加を示してゐる。之は立體增收の結果に困るものにして本島バナナ產業のため喜ばしい現象である。然り而して督府當局のバナナ產業に對する從來の政策は監督權の主張のみに偏し、肥培管理の指導獎勵、取引の改善、販路の擴張等は凡て青果同業組合、又は青果會社に委せ切りである。他の特產物に比すれば稍稍繼子扱の觀なきにしもあらずで、その癖一旦非常時に逢着した塲合は常に他特產物より餘計犠牲に供される傾きがあるのはバナナ業界のため殘念至極である。

    出廻るバナナ、而も停止を許さない性質のバナナの輸送を一時的なりとは云へ、之を停止したことは國策協力の見地より諦める外はない。生產團體たる青果組合及び輸送機關たる青果聯合會の幹部が急遽上北して鐵道部當局に種種陳情したがそれに對する答辯も恐らく國策上已むを得ないの一言に終始したと思はれるが產業報國と云ふ見地よりすれば躍進途上にある臺灣、此地利天惠のよりよき利用によって非常時下唯一の國策たる生產擴充の急先鋒を承る臺灣として、出廻るべき產物の出荷を停止又は制限を加へることは何と云っても不合理であり、將來の發展を阻止するものである。殊に砂糖、米に比し貯藏に方法なく、腐敗性に富み、過熟を虞れるバナナの出廻りを不自然的に停止させることは輸送當局鐵道部今後の一考を促したいものである。問題かこれで後絕つなら一時的現象として看過出來るが今後もある問題として是非共鐵道當局の根本的對策を確立して貰ひたいのは貨車の增加、鐵道復線の完成、線路の整備等によって輸送力の增大擴充を圖り、以て年年繰返される所の肥料の滯貨のみならず、各種大宗產物の滯貨騷ぎをも一齊に解消させたいものである。

    日英交涉順調に進捗 獨貨拿捕措置に關し 頭條新聞

    【ロンドン十二日發同盟】駐英日本大使管當局は英國政府の獨貨拿捕令發出に正式抗議を提出し引續き英外務省と折衝を續けてゐるが確聞するに對獨封鎖強化問題に關聯する日英交涉は其後順調な經過を辿り現在歐洲中立國海港においてドイツ製品を含む貨物を積載しつつある日本船が支障なく英海軍封鎖區域を通過し得るやう大體意見の一致を見るに至つた模樣である、然して原則問題に關しては英國政府は依然獨貨拿捕令を報復であるとの立場を固守してゐるが細目問類に就ては不當な通商阻害を避けるため日本其他中立國の特殊要求を充足せんとする意圖を示してゐる、尚十三日頃オランダのロツテルダムを中帆する大阪商船山陽丸が果して英海軍封鎖區域を無事通過し得るや否やの問題に關しては同船の載貨中にドイツ製品が含まれてゐてもこれが獨貨拿捕發効前に購入契約が成立せるものなる以上全然これを拿捕するとを得ずとの解釋が有力で同船が拿捕令の例外となるは當然なりと言はれてゐる、從つて今後當分中立國港を出帆する貨物も大部分山陽丸載貨と同一の範疇に入るべく各中立船舶は故意に封鎖を侵犯せんとする意圖を推測するに足る根據ある場合の外何等の臨檢をも受けずして航行を許容されるものと解され駐英日本大使館筋でも右に關する日英交涉の進捗に滿足の意を表し日本の利益に特別の考慮を拂ふべき一般的諒解が成立することも近い將來であらうと見られてゐる。

    社說 歐洲の情勢益益複雜怪奇 獨の和平提議說 社說

    獨英彿開戰以來既に三箇月、長期戰化の傾向が極めて濃厚となって來た秋、獨の對英佛の和平提案が全く斷念されたものとみられるに至ったが、米電は伊代表がゼネバに於て獨の新和平案なるものを發表したと報道したが、獨官邊の否定にも拘らず、該報道が全然根據なきものとして一笑に付することが出來ないのである。

    傳へられてゐる獨の和平條件は、チェコ、波蘭兩國の再建、墺太利の人民投票及び緩衝國の建設等であるが、前回の條件に比し甚だしく軟化されてゐると云はれてゐる。その真否は勿論知る由もないが、しかし之れを聯合國側の獨ソ離間を策するデマ放送として一蹴すべく、歐洲情勢は餘りにも複雜怪奇である。

    大島前駐獨大使及び大塲少將等の歸朝談にもある如く、獨の機械化武力の優秀さ、而して大戰は獨側に稍稍有利であると云はれてゐる。又長期戰に對する獨側の體制が整ひ、前回大戰に比し頗る好條件であると傳へられてをるから、獨側から新和平提議をなしたことは一寸信ぜられない。しかも獨ソ關係の緊密程度に就ては輕輕に之れを斷ずることが出來ないとしても、獨伊の關係が依然緊密である限り、ソ聯の異常なら進出に對し、伊國が非常に不滿であると共に、獨逸も又無關心たり得ないものがなければならぬ。殊に今次のソ聯の對芬侵略に對しては、列國の非難攻擊は云ふまでもないが獨逸としても、前面に英佛との戰爭を控へてゐるため傍觀的態度をとってゐるようであるが、しかしその芬蘭と多年友好關係にあっただけに之れを見殺しにすることは心苦しいものがあると察せられるのである。

    ソ聯の對芬侵略は戰爭中に更に一つの戰爭を捲起し、夫でなくとも複雜な歐洲情勢を更に複雜化してしまった。英佛獨が戰爭中である為、ソ聯を抑へる餘力がないのを機會に、ソ聯は敢然バルチック制覇の野望實現に乘り出したのである。バルチック制覇は先づ芬蘭灣をその內海とすることが絕對必要である。そこで先づ大膽極まる對芬軍事行動をとり、芬蘭の徹底的征服に猛進したのであるが若しソ聯のバルチック征覇が完成した塲合、その影響する範圍はスカンヂナヴィヤ諸邦に止まらず、獨逸にも又相當大きく波及すべきは云ふまでもない。又直接利害關係を有しない列國としてもソ聯の傍若無人的侵略行為を默過するわけに行かず、非難攻擊の聲が列國間に囂囂と起ってゐるが果してこの世界中の反ソ輿論がソ聯を幾分でも牽制し得るや否やは疑間なしとせぬであらう。

    ソ聯の傍若無人的な大膽極まる對芬侵略に依って、歐洲列國は今更獨逸がこれまでソ聯の赤化に對する防壁として歐洲に如何に重大な役割を果してゐたかに就て、再認識したであらう。又獨逸もソ聯の底止する處を知らざる進出に無關心たり得ず、獨ソ關係に就き再檢討を要せざるを得なくなったであらう。即ち獨逸は世界的に侵略者の烙印を押されたソ聯と同氣相求めて益益連繫を深かめて世界を敵とするか、それとも伊と共に、歐洲赤化防止の旗を揭げて英彿と反ソ戰線を結成するかの岐路に立ったのである。英佛も又獨逸の重大役割を認識して妥協の道を講じ、反ソ共同戰線に轉ずるか、それとも獨ソ陣營を益益堅固ならしめて、戰爭の規模を擴大し世界戰爭に導くかの岐路に立ったのである。かかる時、獨逸側の和平提議說が必ずしも根據なき一片の獨ソ離間のデマだとは信ぜられないのである。

    新中央政權樹立は 事變處理のポイント 首相政府精動懇談會で言明 頭條新聞

    【東京十四日發同盟】政府は當面せる物價問題其他國內諸問題處理の為め十四日午後國民精神總動員幹部と懇談會を開催精動 の側面協力を要請する所あつた即ち政府側からは阿部首相以下關係閣僚精動側から有馬會長以下出席先づ精動側より精神總動員運動の現狀につき說明懇談に入り當面の問題となつてゐる一般生活資材の需給問題並びに精動そのものに對する擴大改組案等について相互に隔意なき意見の交換を遂げた

    【東京十四日發同盟】政府と精動中央聯盟幹部との連絡懇談會は十四日午後三時から首相官邸 に開催されたが席上阿部首相は特に新中央政權樹立問題に就き次の如く言明した

    政府としては種々の問題が目前に橫たはつてゐるが最も重點を置いてゐるのは事變處理でありこれは夫々擔任者において銳意努力中である事變處理に關聯して新政權の樹立問題があるがその具體的內容に關しては現在まだお話するに至つてないのは遺憾である、新政權樹立の時期は多少遲れるがこれは大きな問題で遲れてゐるのではない結局新政權は既定の事實として出現しこれから事變處理が擴大されて行くものと信ずる、新政權樹立に當つては國民の中にはこれをもつて事變處理の終結であるかの如き觀を持つものもあるかも知れないが新政權の樹立は言はば事變處理のポイントであつて事變處理はこれからずつと長くなつて行くものであることを承知されたい

    社說 島內物價統制の再檢討 社說

    目下我國の最も重要な國策として登塲して來たのは支那事變の新階段たる汪政權の確立と物價統制政策である事は言を俟たないが、就中物價統制の目標とする所は惡性インフレの抑壓にあるので若し不成功に終った塲合には我が戰時經濟政策の遂行に多大な支障を招來すべきは明かである。然るに九・一八の物價停止令前後に於ける物價統制政策は餘りにも機械的であるため決して成功してゐるとは言へない。殊に最近內地米一石五圓の大巾引上げによって多大な衝動を捲想し、內地に於ては益益各種物價間の有機的關係をもっと合理的に處理すべき事を強調される樣になったのである。

    島內に於ける物質統制も大體內地の方針に則って色色と苦心を重ねたが、九・一八の物價停止令によって一應は物價の釘付を為したのであるが、九・一八に於ける島內の物價は物價上向の真只中であるだけ概して內地の原價より割安であったのでそれがため却って移入を阻止してゐる商品も少なくない。即ち移入品は島內でいくら抑制を加へようとした所で、內地の原價が上昇すればそれに應じていち早く改訂を行はざれば却って移入減による物價の激騰を來す事となるので、當局としては常に內地物價の動向を察知し出來る丈敏捷に處理しなければならない殊に輸入品に至っては大豆や豆粕等の如き必需品は輸入地の價格變動に應じてもっと早く適切な對策を講じなければならない要するに輸移入品の價格統制は島內で獨立に決定し得るものではなく、常に產地の價格に左右せられてゐるから、此の方面に對して仲間商人の暴利さへ取締ればいい譯であり、若し下手な干涉を加へれば却って其の逆結果を生すべきは明かである。

    臺灣當局として物價抑壓の力の及ぶべき商品は何んと言っても島內生產品であるが、米は米管によって大體買上價格を基準として統制せられてゐるが、之も生產費や他物價との均衝が得られるよう合理的に決定すべきである。砂糖の價格は內地と同一標準で決定せられてゐるが、他物價との均衡上寧ろ安きに失してゐるから、之も原料生產者に無理な抑壓を加へざる妥當な所で改訂すべきであらう。他の一般日用品の價格も常に生產者消費兩者の生計狀態を睨み合せて適正に規制すべきであるが、今の所未だ軌道に乘ってゐるとは言へない。要するに島內に於ける物價統制は島內自身の力よりも內地に影響される所多く、從って餘りに實情を無視した價格抑壓は徒らに事態の紛亂を齎らし却って闇取引を釀成する事となるので、此の問題は最も困難である丈官僚獨善に陷らざるよう常に民間の聲を取入れて再檢討を加るべき事を此處で強調せざるを得ない。

    西江沿岸要衝を覆滅 陸鷲が廣西省を席卷 頭條新聞

    【廣東十五日發同盟】南支派遣軍報道部十五日午後七時發表

    一、わが南支陸軍航空石川、山崎、鈴木、原部隊の數十機は本十五日翼を連ねて長驅廣西省に飛翔梧州の軍事施設を爆碎し爾後二編隊となり開建、封川附近の敵及び軍事施設に銃爆擊し又歸途肇慶東側にありし敵第六十六軍及 び第百五十五師の各本部並に四會西方白砂附近の新編第八師本部を猛爆しいづれも潰滅的打擊を與へ西江沿岸の要衝を覆滅せり

    二、鈴木部隊は封川附近で敵彈を冒し猛爆中その一機は壯烈なる自爆を遂げたり

    社說 國策に副ふ米增產促進 島民擧つて協力せよ! 社說

    食糧問題は平時たると戰時たるとを問はず、絕對的重大性を持つ問題ではあるが、我が國では永年來食糧の自給自足に馴れた為、內外地を通ずる一元的米穀根本政策を樹立するに至らず、殊に外地に對して、時には增產を獎勵し、時には減段を強制し、遂に今次事變に於ける戰時食糧根本政策の確立が遲れ、本年西日本及び朝鮮中南部に於ける稀有の旱魃に基因する大減收を見て、遽かに意外な衝動を受けたわけである。今や斯くの如き米穀需給關係逼迫の實情に對し、陸軍では重大な關心を持ち、早速軍獨自の立塲から適切な臨機措置を講じ、そして畑陸相は過日の閣議に於て重大警告を與へ、また政府に於ても戰時食糧政策の確立、殊に當面の米穀對策に關し、米消費の節約、代用品の獎勵、外米の輸入、配給の不圓滑防止などの應急措置を講じつつ他方に於て內外地を通じて米穀增產の根本國策を確立せむとしてゐる。

    上述の如き緊要重大なる戰時食糧對策を考へるとき、先づ現下の米穀需給關係狀況を念頭に置かねばならない。供給地たる臺灣、朝鮮はさておき、需要地たる內地に於ては昭和十四年米穀年度末、即ち本年十月に於ける殘存米を九百二十二萬石と豫想したところを、臺灣、朝鮮より移入減少した為め、實際に於て四百六萬石しか殘存しないことになり、そして昭和十五米穀年度の內地に於ける需給關係は農林省調查に依れば、內地收穫豫想高六千五百二十八萬石と臺灣より五百萬石、朝鮮より百五十萬石の移入豫定額とに持越米四百六萬石を加へても供給總高七千五百八十萬石に過ぎず、而して消費額を八千萬石と推定すれば、結局四百二十萬石の不足となり、これに相當の持越米を必要とすれば尚ほこれ以上の不足を豫想せねばならぬことになる。これに對して政府では酒造米制限に依る節約百萬石乃至百五十萬石、七分搗米強用に依る節約百五十萬石乃至二百萬石、その他代用食獎勵等に依る節約數量を加へて凡そ三百五十萬石乃至四百萬石を捻出し、その他の不足を外米の輸入に依って補填する對策を過日の閣議で決定し、既に百二十萬石の外米を買付け濟みと發表されたのである。

    今次事變を契機として新事態に對處する帝國食糧問題の根本方策としては內外地を通じ一元的に米穀政策を建て直す必要あることを痛感するとともに、臺灣に於て從來の米穀抑制政策を根本的に再檢討する必要あることも識者の多く認むるところである。過日金光拓相も新聞紙上で「臺灣に於ける十五年の第一期作に可及的に米穀の增產を行ひ些かたりとも積極的供給の增加を圖ってゐるが、臺灣の農業技術及び土地利用の集約度、肥料の割當等の現況よりして甲當り收量の增加は直に之を期し難く、從てその增產は必然的に水田栽培作物たる甘蔗、黃麻等に至大の影響を與へるので、慎重研究の結果、相當數量の增產をなし、食糧需給の上に積極的に協力せんとする」と言明されたのである。天然の光と熱とに惠まれ、且つ米作の最適地たる臺灣に於て、若し從來の米產抑制政策を積極的增產に轉換すれば、必ずや尚ほ相當の增產を為し得べきことは明かな所である。故に銃後の任務を盡すべき島民としては現下の內地に於ける食糧需給關係逼迫事情を幾分たりとも緩和せしむる為め、且つ戰時下に於ける銃後生活の食糧不安を完全に一掃する為め、米穀生產費の著騰、供給價格の限度などを憂慮する遑もなく、身命を捧げる戰線將兵の勞苦に思ひ及ぶとき、銃後に在る島民の拂ふ犠牲等も何等言ふに足らず、目前の緊要食糧確保國策の線に沿うて一意米穀增產たる重大任務の遂行に邁進せねばならぬと深く信じて疑はないものである。

    心聲 漢詩

    呈林正享先生/陳鏡如、呈杉溪六橋大宗師/陳鏡如、渭雄招飲江山樓純甫夢周文葵少奇咸集卽此/南都、瑾園望新高山/傅鶴亭、次韻/蔡說劍、次韻/吳景山、次韻/林少英、次韻/林少英、次韻/林少英、伯毅宗兄將携眷歸海上賦詩壯行/說劍、己卯重陽日偕了菴同年眞常上人重游毘廬寺/汰公 張棟梁、昭和十四年重九日偕汰公年兄眞常上人游太平山毘廬寺。汰公詩先成。吾輩瞠乎其後矣。因次其韻/了菴居士、次韻/釋眞常

    我が鐵壁の堅陣に 脆くも全面的潰滅 南昌附近敵死體三千を遺棄 頭條新聞

    【南昌十六日發同盟】羅卓英麾下の敵十個師は十一日來冬季抗戰を呼號し小癩にも我に挑戰し來つたが我が痛烈な反撃に遭ひ死體三千、機銃二十、小銃千、彈藥多數を遺棄しさらに參謀以下捕虜百餘を遺して各戰線一齊に潰走全面的に潰滅した。即ち十一日以來高安東北方地區に進撃し來つた中央直系第五十八師は我が田中、上田兩新銳部隊の猛反撃に完膚なきまでに叩きのめされて敗走しさらに十二日未明錦江東岸附近を窺つた雲南軍新編第十、十一師は矢野、森、岡野各部隊の痛烈な攻撃に遭ひ一溜りもなく潰走した、又十三日拂曉錦江南岸市汶街(南昌南方四十五粁)附近に現はれた百五師及び十四日朝撫河西側地區に現はれた豫兵第九師は福山、長谷川、木下等精銳各部隊の猛襲に遭ひ次で十三日早朝撫河東岸より渡河荏港市(南昌東南三十粁)並に南昌東方四十粁の柏林附近に襲擊し來た第七十九師第廿六師第五師の各師は野坂、齋藤、渡邊部隊の猛烈な銃砲火と一齊突撃を受けて敗走しかくて敵の冬季攻勢は僅か三日我が鐵壁の陣に脆くも潰滅し十五日朝全面的敗走を見るに至つた

    社說 憎むべし 買溜め根性 社說

    如何なる「持てる」國家であっても戰爭が何年も繼續されれば全面的に物資が減じて行くのは當然である。支那事變は既に二年半を經過して居るのであるから日本の物資が豐富であり得る筈はない。假りに豐富であっても尚今後戰爭情態が繼續されねばならぬのであるから、國家も國民も極力物資の節約、調節、生產擴充に全力を注がねばならぬ事は敢へて論ずるまでもない事である。しかも國民としては國家が運命を賭す戰時であるから如何なる物資不十分に對しても國家のために忍ばねばならぬ。然るに此の國家重大 時に直面しながら己れ一人のみが物資の不十分から逃れて何不自由もなく安樂に暮そうなどと考へる事だけでも實に許し難い非國民的態度と云はざるを得ない。ましてそれを實行せんとするに至っては正に國民たるの資格なく憎むべき非國民である。

    一本の煙草も二人でのむ、と云ふところに非常時國民としての資格がある。國家の難に對しては全國民が平等に此れにあたるところに國民の真の協力がある然るに不足勝ちな生活必需品に對しても之れを己れのみが豐富に買溜めしよう、買占めようとする行為は隣人が明日の食糧に困って居るのに自分だけが十日も一ヶ月分もの食糧を買溜めて安樂に暮らす、と云ふ實に利己主義も亦極まれる行為である。現在米が不足だと云って血まなこになって買占め買溜めに浮身をやつし一方生產者或は仲買人が賣惜んで居るが、一年間の米が生產されたばかりの時期に於いて此の情態では來年夏期以後の情態が思ひやられる。政府は既に外米輸入によって不足を補ひ今後も之れによって十分調節すると聲明してゐるのであるから、又一方節米と增產に努力して居る以上國民は其の日其の日に事缺く事さえなければ將來に對する不安を持つ必要は無い。若し實際に不足を生じた塲合は其の不足より生ずる苦痛は全國民平等に分擔すると云ふ覺悟さえあれば己れのみが買ひ溜めして國家の苦痛から逃れようとする行為は出來ない筈だ。

    今日物資が非常に偏在してゐるのは統制技術の宜しきを得てゐない點も多多あるが、一方國民の個人主義的傾向即ち金力と機關を持つ者にして極力買溜め賣惜みをやる輩が存在するため物資が不均衡となり社會問題となって居るのである。殊に生活必需品に對し斯る現象が著しくなりつつある事は實に由由しき問題である。十五日の定例閣議に於いて宮城法相より賣惜み、買溜めに對し嚴重なる取締りを要するとなし之れが法令を至急關係各省に於いて制定するよう要請した。併し國民たるもの斯る法令の制定を急務とするが如きは實に皇國民として恥るべきである。法令の制定如何に拘らずわれわれ國民は買溜め根性や賣惜み根性を絕對に斥け國家と運命を共にするの覺悟を一層強固にすると同時に如何なる部面に對して「戰時である」と云ふ非常意識を忘れてはなるまい。

    心聲 漢詩

    次老逵同社韵/一鳴、三疊前韵似性澄子敏一鳴讓甫啓南逸漁諸同社/文葵、秋日登五虎山謁故主辜顯榮翁墓/鹿港 王寶書、南屯庄協選擧竹枝詞/吉堂 何天佑、祝廖朝樹國手以最高票當選庄協/吉堂 何天佑

    冬季攻勢を空から擊攘 陸鷲江北、江南を快翔 連日大戰果を擧ぐ! 頭條新聞

    【○○基地十六日發同盟】敵の冬季攻勢を地上部隊と協力 し空から撃攘すべく我が陸鷲部隊は連日に亘つて江北、江南兩戰線を快翔、多大の戰果を舉げてゐる、即ち十五日午前森玉部隊是松編隊長指揮の○○機は黃石潭、咸寧東南方百粁附近に集結中の敵大部隊を猛爆擊しこれを潰亂せしめまた今西部隊橫田編隊長指揮の○○機は信陽西北並に應山西北方に潛入蠢動せる敵大部隊に對し屢次に亘り猛爆潰亂せしめ更に同部隊竹下編隊長指揮の○○機は繁昌(燕湖西南方三十粁)及び南陵(蕪湖南方六十粁)附近の敵集團並に軍需品集積所を急襲これを爆碎した

    南京下流揚子江の 閉鎖を解く意向 陸海派遣軍共同聲明 頭條新聞

    【上海十八日發同盟】我が軍の作戰上絕對的要求に依り閉鎖された揚子江の開放問題は第三國より屢々これが開放に對し要請があつたが我が軍は最近情勢が漸次緩和したのに鑑み治安維持及び作戰上支障を來さぬ程度に於て一定の制限を附し南京下流揚子江の閉鎖を解き一部交通を認める意向を以て今後海關の再開航江規則の制定等諸般の準備を進めることとなり支那派遣軍總司令部、報道部及び支那方面艦隊報道部は共同聲明を以て十八日午後三時左の如く發表した

    今や揚子江に於てはこれが閉鎖を必要とする作戰上の絕對的要求も漸次緩和し得る情勢□なりたるに鑑み現地陸海軍は右情勢に對應して治安維持及び作戰上の必要なる制限の下に南京下流揚子江の閉鎖を解く意向を以て諸般の準備を進むることに決定せり

    社說 國民に必死の心を持たせよ 官僚は宜しく民眾の中に往け 社說

    非常時下に於て國民全體が總親和、總努力の誡を輸し、以て擧國一致の實を擧げなければならないことは平沼前內閣の唱導を待つまでもないことである。殊に事變の性質が長期化になり、各種の統制が深刻になるにつれて國民が辛を含み苦を茹って、堅忍持久所謂に嚙り着いても聖戰の遂行に協力せしむるには單なる法規や命令ではなく、支配や隸屬の關係より突き進んだ溫い血の通ってゐる何物かがなければならないと信ずるものである。之れなくして只だ冷い命令と指揮のみでは國民を感奮せしめ必死の心を抱かしめることは困難であらう「政治は力なり」と嘯き、力を以て臨めば如何なる事も出來ると思ふのは專制主義者の迷信であり、官僚獨善の思ひ上りでしかあり得ない。古來力に依って統一された國家は歷史上その例に乏しくないが、その何れも失敗に終ったことは史實の證明する通りである。

    真の一致團結は國家的な親愛に基礎づけられたものでなければならない。統治者と被統治者の間に高慢や卑屈の如き挾雜物の介在を許さない、清く溫く而も麗しい純真な狀態でなければならない。非常時をよい口實に普段にも增して威張りちらすが如きは真に唾棄すべき態度である所謂全體主義は個人格を壓搾して成り立つ死んだ平面ではなくして獨立自由な個人格を含んだ生きた全體でなければならない一部の樂器の音を殺しては偕調の取れた交響樂にならない如く個人格を殺して一部の威勢のみを張らせることは決して國家全體の統一と發展を期する所以ではない。平沼前首相の總親和、總努力の狙ふところも茲に在ると信ずるが「日本の全體主義は歐米のそれと性質を異にするものである」と釋明した老首相の言葉は真に含蓄のある味ふべきものである。老首相の理想は遂に具現し得なかったことは今にして思へば誠に惜しむべきことである。

    阿部現內閣は近來頻りに政黨に對してゼスチュアを使ひ、政黨の協力を求めるに汲汲してゐるかに見えるのは單なる議會乘切り工作のみではあるまい。そこには深い時局の認識があり、必然的な情勢の然らしめるところがなければならない。法規と命令以外に國民を奮起せしめ、必死の心を抱かしめる何ものかを獲得すべく渾身の努力を傾注してゐると見るのは果して贔負目のセイであらうか。阿部內閣の努力が果して功を奏するか、それ共平沼內閣の如く無為に終るかは固より豫測を許さない。然し時局はその成功を要請してゐるのみならず、之れなくしては事變處理を完遂せしむることは不可能であり、東亞新秩序の建設も日本國家將來の興隆も考へられないのである。親愛に發足した擧國一致の團結の要は今や絕對的なものである。然し國民に必死の心を抱かしめるには先づ指導者の立塲に在る官僚自身に滅私奉公の精神がなければならない。一致團結の實を擧げるには區區たるスローガンでは出來ない。そこには血のにじむ實踐が伴なはなければならない。官僚は宜しく臺閣から降りて民眾の中に往き、而して彼等と共に苦難を共にせよ!これが國民として必死の心を抱かしめ艱難を克服せしめる唯一の道である。

    汕頭經濟視察記(一) 督府商工課前田氏談 海外遊記

    總督府殖產局商工課長井田憲次氏及び同屬前田仁平氏は先般來皇軍治下に於ける汕頭經濟狀況の調查をなすべく去る十一月二十九日より約十日間に亘り綿密なる視察と調查を遂げた上此程歸北したが汕頭といへば本島とは一衣帶水の對岸に位し廈門と並んで本島とは極めて密接なる關係を有するばかりでなく南洋方面の華僑の出生地としてその經濟的潜勢力は南支一帶に浸潤し居り今後愈々本島との經濟的關係も益々密接となる折柄同地の經濟事情及び貿易の近況とは一般にとり大に參考となると多々あると思ふので敢へて之を揭載することになつたのであるが本文は同氏の汕頭視察記とも稱すべきであらう

    汕頭に着いたのが丁度十一月二十九日で基隆を出て其日の夜から廈門に入港するまで相當船が搖れて食事も滿足に出來なかつたが廈門汕頭間は大した波もなく平隱であつた。幸ひ好天氣に惠まれ汕頭滯在の期間は甚だ短かゝつたが實際汕頭は上陸第一步の印象が大變よかつた貿易として見た汕頭に對しては種々注文もあるが。何分にも現在の汕頭は臨戰地帶のこととて軍側にては、作戰上の理由から入船と貨物の出入に對しては特別の許可を要する建前であるので當分一般の自由貿易は認められてゐない今日では無理からぬことでその多くを語り得ないのは殘念である、が將來汕頭が奧地との連絡が充分行きとゞき治安工作の進捗に伴ひ從前通りの貿易港としての使命を達し得るならば臺灣と汕頭貿易振興上非常に有望であると思はれた、汕頭港の地形とその條件のよさとから觀て從來の輸入港を一變して輸出港にすることもあながち出來ない相談ではないと思はれる。第一氣候のよいことである丁度臺灣の空氣の澄み渡つた初秋の頃を思はせ、そして一日中氣溫の激變を經驗しなかつたのは大陸にありながら不思議な位で、それも海岸に市が臨んでゐる關係であるのではないかと思はれた。今日汕頭港より輸出されてゐる重要物產を見ると、赤糖、羽毛、蓆、漢藥、蒜頭、種子物、蜜柑、禮拜紙、線香軸(竹)鰑、玉子、華僑用漬物、等がある。その他黃麻、麻袋、牛皮などそれに世界全產額の約七◯%を產出するといはれるあのタングステン鑛はそれ〲軍側にて買入れられてゐる今日の處タングステン鑛の產地として知られてゐる興寧、五華揭陽、惠來、潮安などの地が我軍の手に歸するに至つた曉にはどれ位我國軍需資源獲得上大なるかは想像に餘ある處であらうそれからこれは汕頭市內を見たときのことであるが、野菓類と鮮魚類の豐富さでそれに玉子は小粒ながら立派なものが一個二錢位で買はれ皆の食膳に上つてゐる。牛肉もスキヤキなどして見て臺灣の黃牛のやうなカタさがなく、齒切がよくまた味もよい、そこで此等の野菜類、牛肉などの罐詰工場を汕頭に作つてこれを南支南洋方面に華僑用漬物と同樣に輸出しまたは奧地の住民に供給したならばとも考へた汕頭の近海に於いては海產物が豐富にとれて特に蟹と蝦とは有名である。若し汕頭に於いて冷凍工塲などが出來てどん〱冷凍して內地臺灣その他の遠い地方に輸送したならばどんなに水產業が發達するだらうかゞ想像される、特に蟹とか蝦とかに對し非常な嗜好を持つてゐる占領地域內の支那民族と取引したならば輸出品として特異の所在となるだらう。この汕頭として目下必要な物資はといへば、メリケン粉、燐寸、石油、織物類硫安、豆粕、石炭、薪炭料、米などであり。この內で最も缺亡てゐる物資は邦人用は別として第一に米、燐寸、硫安、薪炭料などの樣である。米は此地方で生產される一年の產米ではとても供給困難で約四箇月乃至五箇月位の需要を充し得ない狀態で、一日汕頭から潮州へ軍の保護下に汕頭の南興公司の人々と行を共にした時廣々とした平野が韓江や揭陽河をはさんで橫つてゐるのを見て、成程支那大陸は廣いなあと感心した程で丁度一期作のとり入が終つてこれから二期作の準備の為犂を入れてゐる農民をあちこちに見受けたが、これは奧地のことに就いてはよく判らないが、一口にいへば農民間の田水の配給がうまく行かないことの樣に聞かされたといふのは一部の水田に滿々とあつてもそれと鄰合つた水田の持主と仲が惡い塲合には絕對にその水を分けてやらないといつた極めて無統制な民情と水利とに禍されて折角の美田もうまく利用されない結果だといふことである。現在の臺灣蓬萊米の需給關係から考へて汕頭に於ける不足米を補給することは不可能であるから最低限度在留內臺人に對する常食米として或程度量の蓬萊米を供給すべきだと思ふ年約三十萬ビクルの米を必要とする汕頭市民は從來シヤム米と上海米とに依つて不足を補つてゐる點から外貨支拂を伴ふシヤム米の輸入に付ては難色があり臺灣の蓬萊米にも期待薄といつた方面から考へて唯一の補給先は上海の蕪湖米となる譯で、臺灣といふ特殊の使命を有する立塲から見て色々の點に於いて汕頭ばかりでなく南支對臺灣の貿易といふことは益々その重要性を帶びて來るのではないだらうか、汕頭としては前にも一寸述べたやうに從來上海、廈門、香港、海峽植民地間の貿易が盛で日支事變前から汕頭占領直前まで排日思想の旺盛な處で臺灣との貿易も亦不振の域を脫しなかつたのであるが、赫々たる皇軍の戰果に依つて汕頭の治安は確保され住民も亦日支親善と新東亞建設のために日々その業に精進しつつある姿を實際に見聞して將來汕頭は貿易港として大いに發展するだらうと確信するものである。現在汕頭には軍政務部監督の下に宣撫用品の圓滑なる配給と宣撫上必要なる物資の需給調整を目的として邦人商社並に個人貿易商を以て宣撫用品配給組合を組織して輸入物資の統制を計りつゝある、その主なる組合員は三井、三菱、東棉、日水、臺拓、中南、南興公司、大丸外六十七名で、この外大阪商船、臺灣運輸、臺銀など臺灣と切つても切れない緣の深い各商社が支店なり出張所を設け盛んに經濟界財界に活躍されつつあるのを實際に見て此等の關係業者と御互に汕頭と臺灣との密接なる連絡に就いて打ちとけた意見を交はし得て心强くまた愉快に思つた。此外臺灣關係の人人が雜貨、寫真業、飮食店、カフエーを開いて軍人さん相手に大いにはりきつて一生懸命商賣されてゐる處は如何にも賴母しい。邦人經營の旅館が汕頭に二つある。汕頭ホテルと南華旅館とで、この南華旅館の主人は幸阪洋行主幸阪通介氏の經營で聞けば幸阪氏は今年七十二歲とかで、汕頭在留邦人の草分けとでもいふべく汕頭在留四十年以上といふことである。その意氣の旺なること驚嘆の外はない。排日を物ともせずよく今日迄頑張り通されたものだと思ふ。今後汕頭に於ける邦人の經濟的發展のため大いに奮鬪されんことを衷心より御祈りする次第である

    長江閉鎖一部解放問題 日米交涉は一步前進 ハル國務長官記者團に答ふ 頭條新聞

    【ワシントン十六日發同盟】揚子江開放問題に關聯し十八日の國務省定例會見で記著團から

    たとヘ揚子江の閉鎖が第三國のため一部解除されても為替管理其他通商上の取締りのため第三國の通商が旨く行くまいと上海方面では觀察してゐるそうであるが此點は如何

    との質問に對しハル國務長官は先づ揚子江が第三國のため開放されるのを待つ外はない其上で尚第三國の通商上に障害があれば其際これが問題を取上げればよいのである

    と答へた、記者の受けた印象ではハル國務長官の陳べた所は日本が揚子江閉鎖解除を言明したこと自體が協調的態度であるといふやうに解された、然し國務省極東部當局では第三國人に對する公平な待遇等に重點を置いてゐる模樣で揚子江問題と共にこれらの問題に對する將來の保障を要求してゐる模樣であるが日米會談が米國財產の損害問題より更に一步を進め廣汎な問題に移つたことは日米交涉に一層希望を與へたものと言ふべきである

    社說 砂金開發と東臺灣建設 社說

    最近タッキリ溪谷の砂金層の發見に依って舉國的人氣が臺灣に集り寳島蓬萊島として登塲した事は全國民の臺灣に對する認識を深めるものとして期待されて居る。對外貿易の振興を圖り、更に國際貸借の改善方策として產金に全力を傾注する事は重要國策の遂行である。督府では產金國策に新しい一役を果すべく小笠原技師が多年に亘り探查して發見したタッキリ溪谷の砂金開發に邁進すべく內地より一流の權威者東大の佐藤博士、前田技師を招聘し現地を踏查させ、その結果に俟って砂金の大開發に乘り出す事となった事は刮目すべき事である。東部臺灣の砂金は既に十數年前橫堀博士の調查に依ってその埋藏量の豐富であった事が認められたから今更事新しく騷ぎ立てる程ではなく、タビトの如き上流の高位段丘にも高率の砂金が埋藏されて居るのに對し、學界や業界で注目を惹いたのである。同鑛區の企業價値の有無に對し、同調查團の實地調查に依って決定されるから近く判明されるが、本島の產金政策はこの機會に一大轉換を見せねばならないであらう。

    從來島內に於ける產金狀況より見れば金瓜石や瑞芳金山の如き金鑛採掘は別として砂金の探掘は徒らに一部の小企業家に任せたのでその產金狀態は不振を極めて居り、徒らに天惠の寶庫を地下に眠らせたのである。砂金の如きは小企業に任せるのでなく國家事業として大企業的に開發せねばその目的を達成する譯に行かれないのである。督府がタッキリ溪谷の砂金鑛區を保留し、國家事業として開發せんとの計畫は適切なる對策でありその施工に對しては更に一段と細密なる調查を要し、民間有力企業家の意見をもこの機會に聽取すべきである、單にペーパー・プランを建てる事は却って今後の本島に於ける產金政策に累を及すものである、この機會に朝野の權威者を委員とした產金開發委員會を設置し組織的に島內に於ける砂金の開發に萬違算のなきとを期待するものである。

    東部臺灣の砂金開發が遲れたのは有望なる鑛區の發見が遲れたと共に東部臺灣の開發が西部より遲れたのが主因と見ねばならない。近年來花蓮港築港を始め蘇花道路の完成に依って交通機關が備へたとは言へ未だに不完全である。砂金開發を機會に取り殘された東部臺灣も積極的に開發すべき秋に到達して居るのである。天然資源の豐富なる點に於いては東部は西部よりも却って有望である殊に砂金の如き交通機關の不便が企業價値を著しく阻害するものである事より見れば、督府がこの際一大英斷を以て東部開發に一段と力を入れるべきである。幸ひ本年夏東臺灣機電力會社の創設に依って動力資源の開發に邁進する事となったが督府の開發施設が未だに備って居らない為めに折角の電力開發も交通機關や產業開發の不整備とに依って企業價值を低下する虞があるから砂金の開發を好機會に東部臺灣の建設に對しては督府當局の再認識を求めるものである。

    汕頭經濟視察記(終) 督府商工課前田氏談 海外遊記

    僕が厄介になつた汕頭ホテルは汕頭占領後◯◯宿舍であつたが、今では一般の旅行者をも宿泊させる七層樓の立派なホテルで、自家發電に依るエレベータもあつて設備の行き屆いた近代的な支那趣味を織り交ぜた調度といひ、最上層の展望臺からは汕頭市內は勿論のこと遠く汕頭市民に給水する鹽埠の貯水池の黑煙までも西の方へ見ることが出來て旅行者の淋しさを慰めて吳れるに充分である。只困つたことにはどんな譯だか判らないけれど、給水が充分でないため時々風呂の水が不足することであつた。ホテルの女中の一人に聞いたことであるが、汕頭占領後間もない夏の頃來たので汕頭は暑い處だと思つて冬の着物の仕度をして來なかつたため邦人婦女子用の着物用の吳服屋さんがなくて買ふことも出來ないので已むなく汕頭の支那人町の吳服店から捺染模樣入の地の厚い木綿物を買つて仕立てて居るのですと、北海道の小樽から來たのだといふ色の白い丸ポチヤの細眼の三十位のその女中さんが笑ひながらいつた。

    邦人向吳服屋の一軒位あつてもよさそうだなあと思つたことである。このホテルは永平路にあつて真向側に南興公司の店舖がある。こゝの下君は今迄臺北で役人生活をして居られたときいてゐるが仲々如才のないビジネスマンで今回近く汕頭にあつた煙草工塲を改造して煙草製造にのり出されるとのことで臺灣でお馴染みの曙、荒鷲、ヘロン等が汕頭では他の外國煙草を斷然押へて幅をきかせて支那人にまで喫まれてゐる有樣を見て大いに意を强ふした。外國煙草のスリーキヤツスル、エンバツシー、パイレートなど英米トラストや南洋兄弟商會(之は既に日本系東亞煙草に買收濟だと聞いてゐる)の製品が輸入を禁止されたと同時に一方南興公司の並にならぬ販賣宣傳に努力されてゐる結果であるものとの感を深ふした次第である煙草工塲が實際に製品を出すには少くともこゝ三箇月を要するだらうその曉には臺灣系煙草が汕頭市を獨占する日の來るのも遠くはないだらう。期ふして臺灣に關係ある人々がこの汕頭で大いに活躍してもらつて將來に於ける汕頭の經濟界に大きな地盤を築くべく準備工作をして頂いてゐることは誠に感謝の外はない。ホテルの展望臺からは澄み渡つた秋空の下に汕頭港がつい眼の先に浮んでゐる。

    こゝは揭陽河が海に流れ注ぐ河尻の處に位して港の海の色は飽く迄薄汚い泥水を思はせる。見なれた基隆や高雄の港の海の色のやうな群青色ではない。それもその筈で何分支那大陸の江河の水の色は云ひ合はせたやうにみんな黃色い。第一揚子江にしても黃河にしてもみんな黃色を帶びてゐる。この泥水が吐き出される下流の處に汕頭港があるからである。船も精々三千噸級のもので、しかも碼頭まで約二十町位の位置に投錨といふ風で、人や貨物もハシゲである。一寸不便である。將來汕頭港が貿易港として大いにその使命を果すためには、築港と大規模の浚渫とが最大急務である汕頭に於ける通貨に付いてもよく硏究して見たいと思つたが、疲れた頭ではそう簡單には片付けられない位大きな問題で、これは一人汕頭ばかりのものでなく、所謂圓ブロツク內の全般的な問題であるので後日の硏究資料として置く積りである。汕頭ホテルと軒を並べて、汕頭日本帝國領事館が去る十一月十五日から再び汕頭占領後事務を執り始められたのである。高井領事も健在で既に着任されてゐたことは誠に慶賀の至りであつた。今度は肝心の汕頭刺繡のことであるが、このドロンワークは餘りにも有名であるが汕頭の斯業の一端を書いて何かの參考ともなれば今度の汕頭旅行の目的は大半達せられたものと思はれる。

    汕頭の刺繡業は現在六十一あり內英人三名支那人廿四名外は皆米國人である。支那業者は米本國商人の代理店である資本並に原料一切本國商人の計算に依るもので實質に於て米人商と變る處がない。刺繡は主として亞麻製品に加工され其の最も大なる用途は半月布であつて亞麻糸百番又はそれ以上の細番手のもので我製麻技術にては出來難き薄地物が多く使用されてゐる。卓子掛其他寢臺布タオル等に向くものは我國產品に置きかへる可能性がある。米人工塲の經營方法は各自が本國に販賣網を有し其大部分は注文製造であつて尚ほ其原布材料も本國に於ける注文主の勘定にて英佛白獨和の各國より輸入されてゐる工塲は注文主の原布に此地の低廉なる工賃を利用して加工料を得る事が營業主の目的である。例年六月には「クリスマスセール」の販賣用として本國より「デザイン」を送附し來ることになつてゐる「デザイン」は彼等の生命であつて大切に保管するのみならず其秘密を保つ為には誠に苦心する處である。「デザイン」に掛る費用は頗る多額のもので「ペツトスプレート」一枚分に要する費用は四千弗に達するものもあるといはれ極簡單なものにして尚且つ四十弗を要するといはれる「デザイン」は黑紙に白亞顏料にて描かれたるものである

    之等の「デザイン」に依り準備工程として型紙に針穴機(一定の間隔を置いて針穴を作る「ミシン」用の機械 を以て柄圖案に從ひ穴を生ぜしめて型紙工程を終る。此型紙以下の工程は請負制度であつて支那人買辦此處では特に「コントラクター」といふ名稱にて呼ばれ下請負人を使用する「コントラクター」は布地に型紙より群青色「チヤン」にて印を展寫する者、糸拔工程のみを引受くるもの、刺繡工程の一部を引受くるもの緣取のみのもの、其他各工程每に專門的に引受くる慣習であつて、又其各工程は其地方別に依り專門的で例へば潮州地方が「緣縫」揭陽方面が「糸技」といふ具合に專門的である此やり方は家庭工業にまで能率增進の科學的管理法を應用する米人氣質である。

    女工は主として十一才位より二十才位の小女を使用し特に十一―十二才のものを使用する率多く凡て十五萬人の稼業者ありといふことである。此等の女工が扶養する家族は約三十萬人といはれ、都合四十五萬人の刺繡に依る生活者がある譯である「コントラクター」は自己の引受けたる工程を終れば一應工塲に戾し賃金を受け工塲は更に第二の工程に引渡すかくする事數回にして歸り來りたる完成品を洗濯アイロンの工程を經箱入して荷造出貨するといふ。

    工賃は一工程平均一グロス(半月布塲合壹圓位といふ低廉さであるが、よく其熟練に依り效果を擧げ得るといふ。本業の產額は一千四五百萬元といはれ其內布地代の占る部分は約七百萬元であつて約三百萬元が工賃其他は仕上荷造及米人の口錢である。從つて此地の米國人は本業に依つて頗る甘い汁を吸つてゐるといはざるを得ない。原料の輸入は無為替輸入をなすものが多く輸出は加工費のみの無為替を取組むものが多い、此地には香上銀行が之を取扱ひ輸出ビルを買取つて來る。本事業の經營中心は一、米本國に販賣網を有し「デザイン」及注文を受くる便宜あるものたること二、支那人の「コントラクター」の有力者を有すること三、適當なる資本を有することの三つであつて邦人の進出といふことには一及二、の條件を兼攝するものがないのは殘念である。將來の方法として米國に支店網を有する邦人商社にして汕頭に進出を許されたるものが米國に於て工作し之が輸出の方法を講ぜしめ米人の經營方法に迫る目的にて三井、三菱、東綿、鐘紡の四社を指名し右四社をして日本製の麻絹(絹は少量使用さる等を輸入せしめ自己計算にて製品を作出し輸出せんと決定してゐる。

    尤も右四社以外を加入せしめずといふ決定ではない模樣なるが割込は相當困難ではないかと思はれる。本業には為替の方面にも相當の困難性がある汕頭に於ける通貨は軍票を主とし支那人方面は法幣を使用してゐる軍の方針は軍票支持に全力を盡されてゐる為軍票は他の各地に比し割合高價に保たれ百五十三元見當である。然しながら刺繡の產地は主として未占領地であつて軍票を使用することは頗る困難であり輸出ビルを軍票に交換する方法がない為法幣資金を以て法幣にて工賃を支拂ひ法幣にて輸出ビルを賣る外ない

    米人も此方法にて上海より法幣資金を輸入して利用してゐる。此方法に依るとマージンのみの法幣を獲得することになるのみで實質の獲得にならない前記四社には日本輸入の原布を米弗にて販賣することを發案し實行せしむることになつてゐる。此方法が手取早い外貨獲得であるが、日滿帝麻の兩社がどれ程の亞麻布を供給し得るや今日の處は大した供給はむづかしく、事將來に屬すべきものと思はれる。以上の通りで、臺灣の同業者汕頭進出に就いては尚ほ幾多考究すべき點がある。然し臺灣に於ける同業を發展せしむるためには汕頭に於ける臺灣關係在留邦人と臺灣との連絡をより一層緊密ならしめ汕頭の米人の「デザイン」を取り入れる樣努むべきである。今回の此種調查に種々多忙中にも拘らず彼等米國商社との交涉の衝に當つていたゞいた臺銀汕頭支店長梅津さんと三井物產汕頭出張所長手塚さんに深く感謝する次第である。今後に於いても出來るだけの力を盡し度いとの親切のこもつた言葉を聞いて大いに感激し意を强くしたのである。臺灣に於ける貿易業者が汕頭をよく深く認識し硏究されて益々臺灣間との貿易事業に進出されんことを切望して止みません。

    【寫真は汕頭市街】

    心聲 漢詩

    送兒玉將軍歸京/楊嘯霞、賀黃景南仁棣荇喜/顏笏山、景南慎卿新婚誌喜/林述三、景南同學弟吉席誌喜/杜仰山、景南賢侄與慎卿女士花燭誌喜/葉逸園、黃景南君與愼卿女士聯婚賦此誌賀/林子惠、祝潜廬主人黃景南詞兄新婚/李世昌、祝潜廬黃景南先生與慎卿女士花燭誌喜/李慶賢

    大□奧地に突入 敢□川各地に巨彈 □川上空で空中戰鬪 頭條新聞

    【上海二十日發同盟】艦隊報導部發表

    昨十九日午後海軍航空部隊の精銳は密集低く內陸一帶を蔽ふ惡天候を冒し大編隊を以て奧地深く突入、宜賓、梁山、南川、恩思の功撃を敢行、左 の如き甚大なる戰果を收め、全機無事歸還せり

    一、島田少佐の率ゆる部隊は恩思飛行場及び南川軍事施設を…(原件破損)…に全彈を浴せ、その大部分を擊破、內七機及び貯油庫を炎上せしめたり

    【香港二十日發同盟】重慶來電に依れば十九日日本空軍の大編隊は前後四時間に亘り四川省各都市を爆擊、大損害を與へた、…(原件破損)…上流百五十哩)を爆擊更に他の一隊は重慶政府首腦が多數避難してゐる濾縣重慶綏江中間を空襲した、また成都、重慶も我が荒鷲群の猛烈な爆撃を蒙りそのため重慶は終日大混亂に陷り空襲警報…(原件破損)…

    社說 歲末と救恤 隣人愛の發露が望しい 社說

    萬葉集に次の樣な意味を歌った歌があったことを記憶してゐる「天地は廣いと云ふが自分のためにはどうしてこんなに狹いのか、日月は明るいと云ふが自分のためにはどうして照らして吳れぬのだらうか、自分も人と生れて來たのに綿も入ってゐない、破れ裂けた着物を引っかけそうして地べたに藳を敷いて父母は枕の方に、妻子は足の方に丸くなって□え、飯を炊くとも出來ずに釜には蜘蛛が巢をつくってゐる」と云ふ歌である。貧困もここまで來れば極點である。ピウピウと冷い冬の唐ツ風が吹き荒ぶこの師走に、假令右の樣な赤貧洗ふが如き極貧でなくても、その日その日の暮しに窮しせんべい見た樣な布團に、親子が丸くなって饑え凍えてゐる憐れな細民は澤山あると思ふ。新春を迎へる準備どころではない。明日の米鹽を如何にして求めるかと云ふ下層細民階級の困窮さは、その日その日の暮しに事缺かぬ人人の想像以上である

    歲末の苦しさは昔から云はれて來た。寒さを凌ぐために衣食の費が嵩むことは云ふまでもない。生活に困しんでゐる方面に對する救恤は、年中常に對策が講ぜられなければならないが、殊に歲末向寒の際は一層之が強調されなければならぬ。事變は國民生活の上に少なからぬ影響を及ぼし、最近の如きは物資不足、物價高により漸次國民の生活に壓力が加へられようとしてゐる。もとより戰爭が續けば世界の如何なる國家でも物資に不足を生じ、生活に不自由を來たすことは當然のことである從って此國家非常時に際し吾吾は、常に如何なる困苦缺乏にも堪え忍び、國家と運命を共にする非常時の覺悟がなければならぬとは云ふ迄もないが、腹が減っては何もかも出來なくなってしまふ。既に一般國民にして生活に如上の不自由を感じてゐるとすれば、下層の細民階級の困窮は一層深刻であり、これが救恤も例年より一層範圍が廣くなり且つ救恤の方法も特に講究されなければならぬ。

    歲末にあたって地方各地では歲末同情週間が開かれ金品の募集が行はれつつある。一方昨日から全島方面強調週間が實施され隣保相助の美風を強調されてゐる。恒產あって恒心ありと云ひ、衣食足りて禮節を知ると云ふ。生活の安定なくしては如何に聲を大きくして、國策協力を叫んでも國民の隅隅に屆くものではない。平沼前首相が總親和總努力を標榜して國民に呼びかげた。明日の米鹽に窮してゐる細民階級に、溫い救恤の手を差し伸べてこそ、真の總親和の華を咲かせ總努力の立派な實を結ばせるものである。年の瀬はもはや旬日に迫って來た。饑えと寒さに苦しんでゐる細民の救恤は當局も萬全の對策を講ずべきであるが、生活に幾分の不自由を感じても餘力ある志士、仁人の麗しい隣人愛に發露した隣保相助が望ましい。情の支柱は感奮の力強い心の糧となるからである。

    心聲 漢詩

    謹呈灌園先生/虛谷、謹呈灌園先生 二/虛谷、病中酬虛谷見贈之作/灌園、奉寄灌園先生/少奇、遊寒溪蕃社/蕭献三、遊寒溪蕃社 其二/蕭献三、遊寒溪蕃社 其三/蕭献三、遊寒溪蕃社 其四/蕭献三、遊寒溪蕃社/鄭指薪、遊寒溪蕃社 其二/鄭指薪、遊寒溪蕃社 其三/鄭指薪、遊寒溪蕃社 其四/鄭指薪、補題禮耕悼珠詞/筑客

    日米關係軌道に乘る 通商問題の如きは 憂慮するに足らぬ 頭條新聞

    【ワシントン二十日發同盟】揚子江封鎖一部解除の聲明とこれに並行する日米會談に關してハル國務長官は二十日の定例會見において日本との問題に就て今は何も語り得ないと質問の矢を避けたが國務省當局は日本に對する出方に就き慎重協議を重ねて居りルーズヴエルト大統領にも諮つた上一兩日中にグルー駐日大使に訓令を發するものと見られてゐる、右訓令に依り米政府當局は日米通商條約問題に就きどの程度まで言及するかまたその結果通商條約交涉がどの程度まで具體化するかは察知し得ないが現在の日米會談は通商條約問題と一環したものでこれを切離しては成り立たぬことは勿論であるが米國としては最初から通商條約其ものに不滿がある譯でなく對支問題に關する日米關係を處理するためにこれを外交上の武器として使ひつつあるもので從つて對支問題の調整が出來れば敢て武器を使ふ必要が無くなることは明らかで米國側の立場から言へば通商條約問題は當初より在支米國權益問題に關聯した問題である、他方日本にとつては通商條約問題は對支問題とは別個の問題であるが日米在支懸案の調節に依り自ら解決さるべきものである日本の揚子江開放提案は兩國國交調整に對して極めてよい□圍氣を釀して居り米國としてもこれに對し冷淡な態度であり得ないことは等しく米國消息通の認める所で各般の情勢より推して兩國關係は軌道に乘りつつありと認めて居り通商條約問題の如きは全然憂慮するに足らず事態が好轉し來つた以上條約廢棄といふ武器を使ふ必要は無くなるであちうと言つてゐる向もある。

    社說 真に自肅の實を擧げよ 社說

    最近內地に於ける米不足及び木炭の配給統制に伴って一般國民の間に賣惜みと買溜めの氣風が日增に募り、之がための圓滑を妨げ、物價の騰貴に拍車をかけてゐる傾向がありありと見える。之を徒らに放置しておけば延いて國民生活を困難に陷し入れる惧れあると云ふので政府部內には主要日常生活必需品にも配給切符制を實施すべしとの意見が有力に擡頭して來たのである。一方長期戰に備へる戰時下日本の經濟力を培養するため、國民一年中に於ける一大消費時期たる師走の月を狙って經濟戰強調運動の火蓋は切って落されたのである。本島でも之に即應すべくさきに督府より各州廳に期間中の實施細目を立案せしめ、目下それを實施中である經濟戰強調運動の趣旨並に物價統制の認識を徹底せしむるため各地に於て講演會を開催し一般消費者及び各業者別に呼びかけてゐる

    戰時下國民生活の緊張を促す方途として前記講演會を開催する外、進んで具體的實踐要項として年末年始の生活刷新―自肅を旨とし、虛禮贈答を廢止するは勿論、物資の節約愛護の建前より衣類の新調を見合せ、死藏品不急品、不用品の交換賣買に依る活用、年末年始を通じて一切の無駄を除排する等一段と島民の自肅を要求してゐるわけである更に近時食糧問題の逼迫に鑑み戰時食糧の充實を圖り一便法として國民に白米食の廢止七分搗米の常用を勵行せしめてゐる等、事變以來政府當局が手を換ヘ品を換へて消費節約を島民に勵行させたが果して自肅の實を擧げ得たか?

    今本島の最大消費市場たる臺北市について檢討するに生活必需品の節約、年末の贈答虛禮廢止は相當の實績をあげてゐるが肝要な遊興方面の浪費排除は當局の吹く笛をよそによなよなの花街歡樂鄉は却て繁昌、料理屋カフェー等はどれもこれも超滿員の好景氣を呈してゐる。今島都の遊興稅から窺いて見よう。事變前の年末即昭和十一年十一月中の遊興稅が六、三八○圓七一錢、十二月中のが七、九八六圓七四錢にして事變初年目の同十二年十一月中が八、一一四圓七○錢十二月中が一○、三六五圓○○錢同十三年十一月中が一一、六八四圓六七錢十二月中が一三、六四七圓五七錢であった更に累計的に見れば事變前の十一年四月から十月までの累計が三六、○七四圓(月平均五、一五三圓)同十三年同期間の累計に七一、五五八圓(月平均一○、二二○圓)本年同期の累計は九九、○○○圓(月平均一四、○○○圓)で事變後逐年遞增の一途を辿ってゐる傾向にあり、一方興行稅では事變前十一年度の稅額七、九三一圓(月平均六六○圓)に對し、事變後十二年度は一二、一五四圓(月平均一、○一二圓)十三年度は一四、九○六圓(月平均一、二四一圓)十四年度は三月より十月までの合計では一○、六四○圓に上り、月平均一、五二○圓に上ってゐる。この數字は一體何を物語ってゐるか、經濟戰強調週間中敢て島都市民の反省を促し、一層自肅の實を擧げたいものである。

    第七十五通常議會 愈よけふ召集さる 各黨派、陣容を整ふ 頭條新聞

    【東京二十二日發同盟】事變下第三回目の通常議會なる第七十五議會は明二十三日召集されるが召集を控へ眾議院各派は二十二日午後夫夫議員總會を開催し院內各役員の決定黨首の激勵あり議會に臨む陣容を整備した。

    民政黨

    【東京二十二日發同盟】民政黨は二十二日午後二時より本部に議員總會を開き町田總裁以下二百餘名出席內ケ崎幹事長の挨拶あつて町田總裁より院內總務を左の如く指名續いて院內幹事長並びに副議長、全院委員長、常任委員長、常任委員の各候補者は院內總務の指名に一任するに決定して四時閉會引續き同四時半より丸の內會舘で議員懇談會を開き席上町田總裁の挨拶あつて同七時散會した。

    院內總務

    主任 櫻內幸雄

    一宮房治郞 服部英明 西村金三郞 高橋守平 武知勇記 鶴見祐輔 小山邦太郞 佐藤謙之輔 一松定吉

    議員總會長 野田文一郞

    【東京二十二日發同盟】民政黨院內幹事

    中村梅吉、松浦周太郞、卯尾田毅太郞、服部崎市、山田清、森田重次郞、松尾三藏、山田順策、村瀨武男、吉田喜三太、今成留之助、則本卯太郞、北村文衛、成島勇、小林房之助

    久原派

    【東京二十二日發同盟】政友會久原派は二十二日午後二時より芳三緣亭に議員總會を開き岡田幹事長より激勵の挨拶あり、久原總裁渡支中の為め三土顧問代つて總裁挨拶を為し引續き代議士會に移り院內役員其他を決定して四時散會

    【東京二十二日發同盟】二十二日決定せる政友會久原派院內役員左の如し

    總務 松野鶴平 河野一郞 大石倫治 豬野毛利榮 大野伴睦 服部岩吉 西村茂生 砂田重政 佐保畢雄

    幹事 小串清一 中田儀直 松川昌藏 高畠龜太郞 世耕弘一 玉野知義 淺井茂豬 坂田道夫

    政務調查會長 芦田均

    代議士會長 牧野良三

    中島派

    【東京二十二日發同盟】政友會中島派は二十二日午後二時より永田町の本部に議員總會を開催田邊幹事長より挨拶、中島總裁の激勵演說あり引續き代議士會を開き院內總務其他を決定して三時三十分散會同四時より東京會舘に於ける總裁招待の議員懇親會に出席した

    【東京二十二日發同盟】中島派の院內役員

    總務 野方次郞 今井健彥 堀切善兵衞 木下成太郞 青木憲三 倉元要一 上田孝吉 望月圭介 大本貞太郞 陣軍吉 崎山嗣朝

    幹事 大內竹之助 小平重吉 田代正治 羽田武嗣郞 濱地文平 曾和義戈 稻田直道 石井德久次

    社大黨

    【東京二十二日發同盟】社會大眾黨は二十二日午前十時三十分より本部に代議士會を開き安部中央委員長の挨拶あり後左の如く院內役員を決定正午散會した

    代議士會長 鈴木文治

    院內常任委員長 片山哲

    院內幹事 中村高一 山崎釰二 塚本重藏 前川正一

    政務調查會長 河上丈太郞

    外交調查會長 龜井貫一郞

    社說 防犯運動の根本方策 防犯週間も適切な行事 社說

    督府警務當局では今般全島的に防犯週間を設け、去る二十日から廿六日迄各州廳同時に防犯運動を實施し、銃後治安確保の為め、全島民眾に防犯思想を普及し、犯罪防止の協力を求めてゐることは時節柄甚だ適切なる一行事たるを失はない。言ふまでもなく、犯罪の豫防は獨り警察の努力だけでは十分な效果を擧げ得るのではなく、一般民眾の防犯的努力を俟って始めて所期の目的を達し得るのである。殊に盜犯の如きは各人の隙と油斷から發生するもので、現に宣傳してゐる防犯標語に『百の鍵より一人の留守居』とか、『吾家にも手落はないか今一度』といふやうな氣持ちを個人人人が持つようになれば、それだけでも盜犯豫防に相當な協力になるわけである。

    臺灣の犯罪統計を調べると、最近十年來全島每年の犯人は四萬人を上下してゐる。つまり人口千に付いて每年八人ぐらゐの犯罪者はどうしても出るわけであるが、若し官民相協力して之れを防止する方策を講じなければ每年漸次增加する傾向があるのである。そして刑法に觸れる犯人の罪名を點檢するに、每年賭博はその大半を占め、窃盜、傷害はその次位にあり、爾餘の犯罪は合せても總數の一割に滿たない狀態である。從ってこの三種の犯罪防止に力を致せば、或る程度まで犯罪の減少を期し得るわけである。故に一般民眾をして防犯智識を普及し、防犯思想を涵養し、自警自衞心を喚起せしめたならば、相當な防犯效果を擧げ得ることは勿論である。然し乍ら、警察と民眾との協力を以て犯罪を減少せしめることはあり得ても、これを絕滅せしめることは出來得ない根本原因が外にあることを認識せねばならない。

    元來犯罪は社會的缺陷から發生する社會的疾患の一つである。現社會に貧困者が多數を占めてゐる缺陷がある以上、年年刑務所に繋がれて行く者の大半を占めてゐる財產犯人を根滅せしめることは到底消極的豫防の為し得ない處である。古人の言へるが如く、恒產なき者は恒心なく、畢竟、貧窮から盜心を起すものであるから、若し人類社會より貧困なる缺陷を全く除去し得るならば、犯罪の大部分は必ず消滅するものと斷言し得やうが、貧困者の多く存在せる現社會に於て財產に關する犯罪の根絕し能はざることは寧ろ必然の道理とも云へやう。故に目前に於て警察と民眾の協力に依り犯罪を防止する應急對策は固より甚だ緊急であるが、更に進んで根本的に不健全な社會を改革し、社會的缺陷の除去に必要な諸方策を講じて、犯罪となるべき根本原因を芟除することもより緊要な事である。茲に於て吾吾は先づ一般の人人に心身とも健全なるべき社會教育を施し、また比較的生活の餘裕を有たざる人人をして各その能力に應じ、安んじて生活の途に就かしむる為め、政府當局及び民間有力者が宜しく現社會より犯人を作り出さぬといふ連帶責任感を以てあらゆる努力を拂ひ、人の惡心を起す動機となるべき諸原因を無くすることが最も社會を浄化し、犯罪を根絕せしむる根本方策であると信ずるものである。

    心聲 漢詩

    重遊稻江卽事/渭雄、江山樓小集/渭雄、贈南都詞兄/渭雄、贈少奇詞兄/渭雄、贈夢周詞兄/渭雄、贈純甫詞兄/渭雄、贈文葵詞兄/渭雄、贈春潮詞兄/渭雄、江山樓小集賦似渭雄/夢周、江山樓小集賦似渭雄/純甫、江山樓小集賦似渭雄/南都、喜晤純甫詞長次韵/文葵、逢源兄招飲卽席賦呈並似少奇渭雄二兄/文葵、逢源兄招飲卽席賦呈並似少奇渭雄二兄/文葵、逢源兄招飲於孔雀樓賦似/渭雄、逢源兄招飲於孔雀樓賦似/少奇

    龍州、鎮南關を占領(廣西省西南端) 軍需品補給施設を覆滅 頭條新聞

    【廣東二十三日發同盟】南支軍發表(十二月二十三日午後六時三十分)

    一、我精銳隼部隊は二十一日夕刻突如廣西省西南端龍州、鎮南關を占領せり、該地附近に於ては佛印が蔣援助のため□給せし多數の軍需品を押收せり

    二、該地占領部隊は同地の補給諸施設を覆滅し、其目的を□せしを以て本日一時該地を撤退せるも今後更に同地が敵の補給軍事施設として復活し或は他方面に於て新たに斯くの如き施設の現出したる場合に於ては斷乎として反復塞源行動を徹底すべし

    社說 肥料配給の農會獨占は不可 社說

    今回肥料配給規則の改正に依って從來統制せられてゐる硫安や過燐酸や調合肥料等の無機質肥料以外に、有機質肥料たる大豆料や骨粉や魚肥菜種油粕等と化成肥料に對しても販賣數量、販賣先、販賣價格、販賣時期其の他の販賣條件迄も全面的に當局□配給統制を受ける事となり、□に硫安、過燐酸、大豆粕等の□內供給數量が內地に於ける電力不足及び生產事情等に依り減少せざるを得なくなり、之を合理的に配給せんとする建前から從來の肥料商人を全然無視して其の配給權を取げ上以て臺灣農會に一手に取扱はせるべく殖產當局の方針が既に內定してゐる事を表明した。其主要な理由は今後島內に於ける農業の適地適作主義を實行せんがために肥料に關する各般の智識を有する農會の手を以て配給する事が最も合理的であると言ふにある。然し斯かる理由は特殊肥料、例へば調合肥料の如き種類のもの次ならば或は其の理由があるかも知れないが、販賣肥料の大宗たる硫安や、過燐酸や大豆粕等は米、バナナ等の重要農作物にどれ丈施用すべきは一般の常識として知られてゐるので、強ち農會の手を借りなければならない必要はない。從って農會では統制強化の波に乘って一般肥料商を廢業せしめようとする事は餘程慎重に考慮しなければならない。

    殊に臺灣農會は現在獨立な團體と言ふよりも事實に於て殖產局農務課及び各州廳の勸業課の出店とも見做さるるべき團體であって、此の點に關しては督府としても問題を輕輕しく取扱ってはならない事と信ずる。次に臺灣農會の如く其の本然たる農業指導よりも寧ろ事業方面に多大な進出を試みつつある事は果して邪路に走ってゐないか、從來農會が干芋の販賣其の他の事業へ獨占的に進出して來たが、其の成績が決して芳ばしいとは言へない。現に農業倉庫の經營は完全に失敗して遂に產業組合へ讓らざるを得ざるが如く、農會としては事業方面に進出するにしても自ら其の限度があるべき筈である此の點に關して今後全面的に再檢討を加ふる必要があらうと思はれる。

    有體に言へば農村に於ける肥料の配給は農會よりも農業組合がより有利である事は內地に於て既に試驗濟の事であり殊に多大な遊金を抱いてゐる島內產業組合をノックアウトした事は假に政治的解決の結果であるとは言へ、非常な無理である事は周知の通りである。商人と雖も徒らに中間機關として之を無視すべきでなく永年の經驗によって配給途上に重要な機能を果しつつある事は今更喋喋する必要はないが、假りに事情の變化に依って全然無用の機關となっても從來の地盤投資、貸附金等の關係で其の廢業を為さしめるにはそれ相當の轉業資金を交付すべきは言を俟たない。肥料商としては更に督府に對して陳情を為す筈であり、督府としても非常時の統制強化に便乘する事を能とせずして、出來る丈公正な立塲を以て此の問題を處理すべき事を特に要望せざるを得ない。

    聖上の親臨を仰ぎ あす開院式を擧行 頭條新聞

    【東京二十四日發同盟】聖戰下第三年目に迎へる第七十五通常議會は兩院の成立を見たので二十六日開院式を舉行畏くも

    天皇陛下には親臨せられる旨二十四日仰出された同日

    陛下には戰時下の折柄前議會におけると同樣御正裝を召されず陸軍樣式御軍裝に大動位副章を御佩用百武侍從長御陪乘、松平宮相、蓮沼侍從武官以下を隨へさせられ略式自動車鹵簿にて午前十時四十分宮城御出門貴族院に行幸一旦便殿に入らせられ御先着の皇族殿下に御對面それより阿部首相以下各閣僚、樞府正副議長以下各顧問官並に貴眾兩院正副議長等に拜謁仰付けられた後午前十一時開院式場に臨御優渥なる開院の勅語を賜はり茲に事變下三回目の第七十五通常議會開院式は嚴肅に終了

    陛下には諸員奉送裡に同十一時十五分議事堂發御宮城に還幸あらせられる。

    粵漢線に沿ふて猛攻 敵早くも混亂に陷る 我諸部隊殘敵を急追 頭條新聞

    【○○前線に□二十五日同盟特派員發】冬季攻勢を呼號しつゝ粵漢線廣韶に侵入、廣東北方山岳地帶によつて我に抵抗し來つた余漢謀指揮下の敵四ヶ師に對しわが精銳松野、湯屋、田山、野口、林、中野、正木の諸部隊は空陸呼應敵の左翼方面を衝いて粵漢鐵路に沿ひ二十四日午後一時を期し北江の支流泡江の敵前渡河を敢行し引續き峻嶮な山地による當面の敵三百を潰滅し午後三時半早くも要衝○○の線に進出した、○○以北粵漢方面の敵は神速果敢なわが軍の猛攻に早くも混亂狀態に陷つた

    【○○前線にて二十五日同盟特派員發】粵漢線の守備に任じてゐたわが松野、野口の諸部隊に對し十八日以來三日間小□にも冬季攻勢を呼號する敵の摯拗なる夜襲が繰返されたか之に對し二十三日朝來松野、湯屋、田山、野口、林、川口、正木の各部隊は猛然即擊滅の火蓋を切つた、粵漢鐵路に沿つて各部隊一齊に行動を開始、敵は早くも浮足立つて北方へ潰走を始め同日午後空陸呼應して敗敵を○○ ○線に追ひつめ砲聲殷々と同河一帶の平地を壓す、同一時南支特有の竹林を利用して果然白晝の敵前渡河を敢行した、この大膽な奇襲戰法に當面の敵三千は四分五裂○○河北岸の山地に遁入これを目がけて砲身も裂けよと○砲の猛射に敵は屍を曝して潰滅した、同三時半には同河岸の要衝○○は忽ちわが手中に陷つた、息つくひまもなく廿五日朝來諸部隊は殘敵を求めて北方に急追中である

    心聲 漢詩

    醉後不能再赴渭雄之招賦此却寄/春潮、讀筑客冬日吟却寄/覺齋、過澹廬恭呈傅鶴亭先生/星橋、謹次廖君居仁見贈韻/鶴亭、□莎行(有作)/陳雪滄、前調(和雪滄社兄有作)/廖星橋、病起/魯詹

    帝國議會開院式に 優渥な勅語賜はる 頭條新聞

    【東京二十六日發同盟】二十六日の第七十五通常議會開院式に賜はりたる勅語左の如し

    勅語

    朕茲ニ帝國議會開院ノ式ヲ行ヒ貴族院及眾議院ノ各員ニ告ダ帝國ト締盟各國トノ交際ハ益々親厚ヲ加フ 朕深ク之ヲ欣フ 朕カ忠勇ナル陸海軍人克ク百艱ヲ排シ□晝進攻其ノ宜キヲ得銃後ノ臣民齊シク奮ツテ奉公ノ誠ヲ致スコト切ナリ

    倡歐洲ニ禍亂勃發シ世界ノ情勢複雜ヲ極ム宜ク宇內ノ實情ヲ審ニシ國力ノ充實ヲ計リ以テ帝國ノ所信ヲ貫キ東亞安定ノ實ヲ舉クルニ遺□チキヲ期スヘシ

    朕ハ國務大臣ニ命シテ昭和十五年度及臨時軍事費豫算ヲ各般ノ法律案ト共ニ帝國議議會ニ提出セシム卿等其レ克ク時局ノ重大ニ稽へ和衷審議以テ協贊ノ任ヲ竭サムコトヲ期セヨ

    社說 第七十五議會の中心論題 政黨の擡頭注目さる 社說

    事變下第三回目の第七十五通常議會は廿三日召集、夫夫成立を見たので、廿六日開院式を擧行して年內の行事を終へ、來月の休會明け議會に於て愈愈本格的論戰の幕が切って落されるとになった。

    本議會は支那事變處理問題を始め、山積せる□內外諸重要問題を中心に兩院を通じ真劍に檢討を行はれるものとみられてゐる。殊に眾議院に於ては、最近の名難なる內外情勢打開のため、政府が國民を背景とする政黨勢力の協力を求めてゐる現情に鑑み、各派は諸般の問題に就き相當積極的な論議が活潑になされるものとみられるが、これを好機に、各派は政黨勢力の挽回を圖るものとみられ頗る注目されてゐる。

    支那新政權樹立の具體化に應じての事幾處理が真劍な今議會の中心問題となるべく、更に百三億圓の明年度豫算の遂行、而してそれに伴ふ全面的統制改革就中、物動、生擴計畫を中心に深刻な論戰を行はれるものとみられてゐる。又米穀問題、物價政策等戰時財經政策の根本諸問題等の外、帝國の外交方針に就き真摯な論議が豫想されるが、結局、失敗せる內政諸問題たる貿易省問題、物價問題、米穀問題、官吏制度問題等で議會に於て相當の痛手を負ふとは免れず、相當波瀾あるとは確實である。それ故に、政府はこの痛手を最少限度に喰ひとめんと、懸命に對議會策を講じて來たのであるが、その最も効果的な方法として打ったのが首相の五黨首との懇談であったが、果して所期の効果が擧るかどうかは今後の推移に俟たねばならぬ。

    在野各政黨の對政府協力の限界は事變處理の根本問題に關する限りに於ては無條件で協力するが、しかし個個の具體的政策に就ては改めて檢討し、是是非非主義で行くとは大體推斷し得るので、上述の諸問題に就き活潑な論難攻擊がなされるものと豫想されてゐる。併し乍ら、責める政黨も、責められる政府も、これ等の諸問題では結局協力して善處する外なく、論戰としては如何に激烈であらうとも、政府に致命傷を與へ止めを刺すとは避けるのではないかとみられてゐる。

    阿部內閣は弱體內閣と評され、又內政問題で種種失敗を重ねて來たのではあるが、しかし今議會に於て、それ程ハッキリした赤信號が見えないのは、色色な後楯があるにも因らうが、併し政黨各派はむしろ政府を鞭撻しつつ自己勢力の挽回に努める方に重點を置くのではなからうか。

    齋藤內閣以來七代に及んだ官僚を中心とする擧國體制は、阿部內閣の實績に依って再檢討の域に入ったのだ。つい二、三箇月前まで政界の一隅に忘れられてゐた政黨が、官僚政治失敗の反射作用として表面に浮び出んとしてゐる。町田民政黨總裁の引き出しに軍と政府が協力した如きは實に顯著なる事實であった。これは最近の政治的特色の一であって、事變處理に政黨にも責任を分擔せしめんとする傾向は政黨の真の更生とは別として、今後の政治情勢への示唆ともなり、又一部特權階級の政權壟斷等の聲に對する豫防線にもなるであらう。

    政黨側としては漸く好調を呈せんとする折柄、今議會に於ける成績如何が、即ち政黨更生への試金石でもあるので、政黨側も自肅に努むるであらうが、しかしこの好機に乘じて、果してどれだけその勢力を挽回することが出來るかは頗る興味ある問題である。

    新生廈門だより/一記者 海外遊記

    ◆......新生廈門は南支に於ける最重要の據點として極めて重きを為すに到ったことは今更ら贅言を要しないであらう現在々留同胞は一萬に達し今後更にますます隆昌に赴かんとする曾って居留民間に提唱せられた神社建立は遂ひにその計畫を進められ來年の光輝ある建國二千六百年の春季竣工を目標として具現化することゝなった

    ◆......東亞新秩序の建設が始められると云ふ時に年來の宿望たる神社を造營し在留同胞の守護神として日夜之を信仰し以て國家の隆盛と同胞の繁榮と而して東亞の安泰を念じ併せて心身の鍛鍊を圖らんとするは最も意味あることである一方支那事變は未だ終熄に到らざるに鑑み先づ非常時局に相應しき清楚にして質實剛健なる神社を建立し□て事變の終熄を待って大增築を施しその完璧を期せんとするのは時宜に適した計畫と云ふべきである

    ◆......その計建綱領は次の通りである一、名稱廈門神社二、管理者、廈門神社內臺人氏子但し當分の間內臺居留民會三、敷地廈門市街東端蓼花溪美山約五千坪の高地西、御神體、大神宮明治神宮、臺灣神社五、建立費見込高五萬圓六、財源建立費は現有基金の外在留同胞よりの淨金寄附並各方面よりの助成金及寄附に依る七、工事豫定、昭和十五年二月十一日の紀元節に地鎮祭、同年四月二十九日の天長節に鎮座大祭施行の豫定である

    ◆而してこの廈門神社建立委員會は委員長、內田總領事、副委員長高橋日本民會長同蔡臺灣民會長、顧問水戶興亞院廈門連絡部長官、牧田廈門根據地隊司令官、賛助員小豆澤大佐、中堂調查官、藤村書記官、澤村陸軍中佐、磯田技師その他委員は庶務會計、敷地、工務、寄附金の四係に分ち內田委員長より左記諸氏に委囑それぞれ盡力することになってゐる

    庶務會計係

    高橋近信、岡本久吉、東忠二朗、中村德治、鈴樹忠信高桑喜作、魏根宣、郭發、野畑藤吉、福士堯行

    敷地係

    澤重信、中津賢一、古賀菊三、飯田甲子郎、池本義憲、今田榮德、星原甲一、蔡世興、黃六、野畑藤吉

    工務係

    庄司德太郎、玉井文藏、丹後一、磯田謙雄、中津賢一、木村貞次郎、連川□、吉井秀男、吳萬來、郭盈來

    寄附金係

    古澤勝之、高橋近信、鈴木佐平、楠木三九兒、水元恒八、小林義雄、佐野厚、森田民夫、東忠二朗、高桑喜作、中川陸三、二瓶邦雄、平山勳、石川汎、別所孝二、堀江左武郎、中林健次、陳學海、陳長福、林平城、林木土、黃談根、殷雪圃、陳陽山、其他臺灣民會議會全員

    心聲 漢詩

    渭雄過訪邀小奇文葵同飲於孔雀酒樓/南都、哭幼春弟/林仲衡、呈寶昆宜秋二詞兄/邱耀青、次韻/蘇宜秋、次韻/洪寶昆、哭王變遷先生作古/蘇宜秋、說劍得詠絮子率成賀句/鶴亭、次鶴老賀說劍弄瓦瑤韵/竹修、呈鶴老/說劍、次韵/雪滄、次韵/遜庭

    皇軍に感謝決議文 兩院滿場一致で可決 頭條新聞

    貴族院本會議

    【東京二十七日發同盟】二十七日の貴族院本會議は午前十時十二分□會諸般の報吿の後

    松平議長

    昨日開院式に當り畏くも天皇陛下より賜はりたる勅語に對し奉答文を捧呈致したいと思ひます、右草稿は議長の手許で起草致しましたからこれを朗讀致します

    とて別項の奉答文案を朗讀し全院一致で可決、依つて松平議長は奉答文捧呈のため參內、佐佐木副議長議長席に着き全院委員長選擧を行ふ、開票の結果大多數をもつて德川圀順公火曜が當選次で常任委員を各部において選擧のため十時四十一分一旦休憩、十一時二十九分再開松平議長より

    天皇陛下に拜謁仰付けられ奉達書を捧呈致したに對し重ねて優渥なる勅語を賜はりました

    と報吿し滿塲起立最敬禮裡に勅語を奉讀す、次で

    一、陸海軍に對する感謝決議案を上程一條實孝公(火曜)より提案理由の說明あり滿塲一致に可決しこれに對し

    畑陸相 唯今滿塲一致我が出征將兵及び戰歿者に對しまして御懇篤なる感謝決議を賜はり感謝に堪へませんこの趣きは直ちに出征將兵に傳達しまた護國の英靈に對し奉吿致します、支那事變も近く第四年を迎へんとし皇軍至る所赫赫たる武勳は固より天皇陛下の御稜威の然らしむる所であります、茲に全陸軍の將兵に代り厚く謝意を表します

    と述べ代つて

    吉田海相 我が海軍は目下陸軍の精銳と緊密なる連絡の下に勇戰奮鬪多大の戰功を收めて居りますことは聖上陛下の御稜威と銃後全國民が渾然一つとなれる熱意ある後援に依るもので時局の前途は愈よ重大を加へるの秋わが將兵一同は益益奮鬪し大元帥陛下の大御心を安んじ奉り下は全國民の期待に副はんことを堅く期しゐる次第である。

    と謝辭を述べ終つて書記官より休憩中各部において選擧した常任委員の報吿あり最後に松平議長より本年の議事はこれを以て終了してゐる旨を宣し同十一時五十分散會

    感謝決議文

    【東京二十七日發同盟】貴族院の陸海軍に對する感謝決議左の如し

    支那事變勃發以來三星霜帝國陸海軍は勇戰奮鬪克く敵軍を擊破し赫赫たる武勳を奏せり貴族院は茲にその偉功を頌し特に光榮ある死傷病兵に對し深甚なる弔意と感謝の意とを表す

    眾議院本會議

    【東京二十七日發同盟】二十七日の眾議院本會議は午前十一時五分開會、小山議長は奉答文奉呈のため參內につき田子副議長初めて議長席に着き直ちに全院委員長選擧に入り投票の結果百瀨渡氏(民政)多數を以て當選した次で常任委員は各部において選擧を行ふため同十一時四十分休憩、午後零時二十分再開

    小山議長より 本日午前十一時參內

    天皇陛下に拜謁仰付られ謹んで勅語奉答書を捧呈致しました、これに對して陛下より優渥なる勅語を賜はり恐懼の至りであります慎んで茲に捧讀致します

    と滿塲起立最敬禮裡に勅語を捧讀し次いで休憩中の常任委員選擧の結果報吿あつて日程に入り

    一、陸海軍將兵に對する感謝決議案(各派合同提出)

    一、戰死將兵に對する敬弔決議案(同上)

    を上程し、第一案に對しては小川鄉太郞氏(民政)第二案に關しては山崎達之輔氏(政友)中島派各各起つて提案理由を說明滿塲一致可決し次で小山議長より謹んで戰死將兵の英靈に對し一分間の默禱を捧げたいと諮り直ちに起立默禱の後畑陸相、吉田海相より只今は御懇篤なる感謝並に敬弔決議を賜はり感謝に堪へぬ直ちに現地將兵に傳達御期待に副ふべく努力する旨謝辭を述べ次いで故京都府第一區選出議員井羅直三郞氏(政友)逝去につき同府選出西村金三郞氏(民政)追悼演說を行ひ終つて小山議長より今期議會再開に關しては政府の都合に依り早め兼ねた旨を說明して

    明二十八日より一月二十日まで休會する

    旨宣し異議なく決定午後一時散會かくて年內の議事は全く終了した

    社說 國勢一年を顧みて 社說

    事變第三年を迎へた近衞內閣が世は松の內と云ふのに突如として總辭職した、首相自書による「事變が新段階に入った以上は新しい內閣が出來て新想工夫をこらすのが好い」との辭職理由だった。併し斯んな抽象的理由で內閣が辭職する筈のもので無い事は三つ兒にも解る。要するに近衞內閣が時局打開に行き詰りを生じたのは爭はれない事實であった。近衞首相は三回に亘って閣員更迭を行ひ最後の宇垣外相、荒木文相等の登塲によって愈愈「大物內閣」を香はし國民の信頼も加ったのであったが日ならずして宇垣外相の退塲となり此處に近衞內閣辭職の爆彈が裝鎮された形となった、即ち宇垣外相退塲の理由は內に於いては興亞院出現の反對、外に於いては對英米外交政策を繞って近衞內閣の主流的動向と全く反對の立塲をとった事に起因してゐた。一口に云へば所謂親英親米的思想と其の反對思想の正面衝突と云ってよからう。

    併し此の二つの思想は宇垣外相によって始めて衝突したものでは無く長い間の日本に於ける指導階級の對立となってゐるのであるが大體に於いて宇垣思想は重臣方面及既成勢力側の把持するところであって宇垣大將退塲後も此の對立は近衞內閣の針路に內攻して拭ひ去る術がなく遂に近衞青年首相の根氣が盡きて新工夫を次の內閣に託する事になった。

    苦悶をこめたバトンは平沼男に渡された。大首相として最後に殘されてあったかの如き印象を與へてゐた平沼男に大命降下するや日本國民は勿論世界の目が水の底きに流れるが如く平沼內閣に注がれた程に平沼男は一種特殊なそして魅力ある存在であった。それだけ國民的期待が大きかった。然るに近衞前首相を無任所大臣として留め、且つ軍部大臣其他を留任せしめ、平沼內閣は近衞內閣の頭と尾を取り替へたのみで胴體は近衞內閣と云ふ變形內閣となり、殊に近衞內閣を踏襲する意味を內外に示すために近衞前首相を無任所大臣とすると云ふのであったから平沼內閣は始めから一本立ちの內閣で無いような印象を與へ全く國民の期待を其の組閣頭初に於いて裏切ってしまった更に平沼首相は「萬民輔翼」「總親和」と云ふ古典にして幽雅なる旗印をかかげたのであった。百萬の大軍が大陸で血を流して戰ってゐる真最中、しかも革新政治、行動政治の標本とされてゐた平沼男が斯くも悠長にして古めかしい觀念的標語をかかげるに至った事は何んたる皮肉であり國民期待への裏切りであった事か。併し「革新平沼」を裏切ったのは當の本人ではなく日本の國情が斯くあらしめたと觀るのが妥當である、即ち重臣層は「革新平沼」を好ず七十二歲の圓滿なる老宰相を求めたのであった、所詮平沼男の登塲は「革新平沼」のそれでなく日本の現狀に制約された平凡な老宰相に過ぎなかった。

    平沼內閣は國內政治を顧るいとま無く外交政策即ち日獨伊軍事同盟を繞る「歐洲對策」の名のもとに五相會議を繰りかへしてゐる內に突如として獨ソ不可侵條約の出現によって平沼內閣は呆つ氣なく八箇月の短命で退塲してしまった。此處に見逃せないのは五相會議の立役者板垣陸相、米內海相、有田外相、白鳥伊大使、大島獨大使等の主張が水泡に歸した事である。水泡に歸した事が好かったのか惡るかったのかは後世史家と神のみの知るところであるが要するこ八月政變は舊體制擁護勢力が芽をふき出しつつある實證として看過すべからざる事實である。

    平沼內閣の後を受けた阿部內閣の出現は國民にとって意外の感を與へた。と云ふのは阿部大將の存在を國民が忘れてゐたからであった。併し所謂玄人筋に於いては平沼內閣の短命を豫想して阿部大將の登塲が豫測されてゐたのであった。阿部大將は軍人の內では最も常識家とされ又溫厚篤實型の人物である事に首相候補としての實現性があったと云ってよからう。果して出來上った閣員は何れも圓滿型で占められたので組閣匆匆より弱體的印象を國民に與へたのは事實である。以來貿易省問題、少數閣僚主義の變更、町田總裁引出し等すべて內閣の敗北となり愈愈其の弱體化を暴露するに至った。併し阿部首相は飽くまで事變處理一本槍でねばってゐるのであるが依然國民的信任は香しからざるものがあり來春再開議會後に於ける深刻な曲折が豫想されてゐる。

    蘭州大爆擊を復行 陸、海鷲三日に亘り 大規模の綜合作戰 頭條新聞

    【上海廿八日發同盟】艦隊報道部發表、我□陸海軍航空部隊は十二月廿六日緊密なる協同の下に奧地選距離大規模の綜合作戰を實施し廿六日より廿八日迄の二日に亘り北方赤色ルートの最大據點蘭州に對して大爆擊を復行し敵に潰滅的打撃を加へたり

    社說 昭和十四年を送るに當りて 阿部內閣の親民政策に期待 社說

    昭和十四年は正に暮れんとしてゐる。顧みれば今年は誠に多事な一年であった。先づ當面の支那事變に就ては殘破の廢墟から、新しい支那の誕生は汪運動の展開に伴って、今や正に呱呱の聲を擧げんとしてゐる。勿論支那新中央政府が成立しても、戰爭か同時になくなる譯ではないが、事變そのものは一つの決定的な段階に到達することは爭ふことの出來ない事實であらう。更に國際關係に眼を轉じて□れば、即ち獨ソ協定の成立あり、次ぎに英佛の對獨開戰、獨ソの波蘭瓜分、日米通商條約の木國に依る一方的廢棄等等真に目眩苦しい複雜怪奇の樣相を次ぎ次ぎに繰りひろげて來たのである。その內我が國にとって、最も關係の深いものは何んと言っても獨ソ協定の成立と歐洲戰爭の勃發であらう。殊に獨ソ協定の成立は單に日本の外交に劃期的な轉換を來たらしめたのみならず、實に內政的にも思想的にも、多くの變化を我が國に齎らして來たのである。

    滿洲事變以來、我が國の國家的動向を左右して來たかに見えた所謂新勢力の發展は平沼內閣の出現によって、正にその最高潮に達した觀がある。然るに獨ソ協定の成立は遂にこの勢力のシンボルたる平沼內閣の退陣を餘儀なくせしめ同時にその勢力の落潮の端緒を開いたのである。斯くて阿部內閣の登塲に及んで一層その傾向を顯著ならしめたのである。阿部內閣成立して僅か四箇月餘に過ぎないが、早くもその弱體無為の故を以て世の批評を受けてゐる。然し阿部內閣は假へ朝に令して暮に改めると云ふ譏りを甘受すべきであるにもせよ、その政黨に□近し、輿論に耳や藉さんとする態度のあることによって、充分にその存在の意義を持つと言って差支あるまいと思ふのである。勿論阿部內閣の斯るゼスチュアは決して鮮明にして、且つ颯爽たるものであるとは言へない。然しその言動の間隙に隱現する民に親まんとする意圖は充分に汲取ることが出來るのではないか。

    世間には木を數へて林を忘れると云ふことに類似したことがしばしばある。國家の為めに働くと言ひ乍ら、國家の本をなしてゐる國民の存在を忘れてゐる運動が行はれる所以である。阿部內閣の民に親まんとする態度が若し本心から出たものであるとすれば、既に問題の核心を把握したものと云ふべく、從來の過ちを矯正することが出來るのみならず、事變處理の最も大切なポイントに觸れてゐると云はねばならない。阿部內閣は或は弱體であるかも知れない。然し國民の支持を得れば、弱體亦變じて強體となり得るのである。來る第七十五議會に於ける阿部內閣の表現こそ國民の注目に植ひするものがあらう。阿部內閣は事變處理に專念することを使命としてゐる。事變處理に國民の協力なくして出來るものではない。吾人が阿部內閣の親民政策に期待するのは取りも直さず、その事變處理の成功を期待するからである。茲に昭和十四年を送るに當り、敢へてこれを強調せんとする所以である。

    “事變處理完遂に邁進” 內閣記者團と會見し 頭條新聞

    【東京二十八日發同盟】阿部首相は二十八日午後三時三十分官邸で內閣記者團と會見、眾議院內における反政府的空氣の濃化に依る政局の微妙なる動向に對する見透、これに對する政府の態度方針、事變處理、當面の內外諸問題並に對米關係などにつ いて左の如くその所信を披瀝した

    政局問題眾議院有志の政府に善處を要望する理由は色々あつたが要するに今□の狀態では事變處理も完全を期し得まいといふのであら、現內閣は組閣以來事變處理を目標としこれに關聯ある內外諸問題の調整に邁進しつゝめるがその遣方には色々あつて今日は事要處理完遂の途中にあるので色々の意見はあるけれども今これを放棄して他の同題で辭むべきでない、今後益々努力して行くつもりである、眾議院各派有志の話は一方的のものとして承つて置いた、この運動がどうなるかに就ては□觀しつゝ事變處理及びこれに關聯する內外諸問題に對處して行くつもりである。これがたぬ五黨首と特に會談することは今のところ考へてたない五黨首とは隨時會談することとなつて居り休會明け前に一度御會ひすることに話してあるがどの問題で話合ふといふことは決つてゐない。政府としては政黨の動きに就ては色々の場合を考へて置かねばならぬ□思つてゐる。然しこれがため特に對政黨工作を行ふやうなことは考へてゐたい

    物資物價統制對策

    物資物價の應急對策は今度の物價委員會との懇談會でも決めたがその根本方策はこれから先の研究に待たねばならぬ

    低物價政策と家族手當問題 低物政策は惡性インフレの防止と一般生活の基準と目標に立てられたものであるが米は三十八圓の公定價格では出廻り惡く他の物價に比べて安すぎたので四十三圓までこれを引上げたものでこれに代つて他の物價に對する影響が問題となつてゐるが出來るだけ生活の安定するやう物價は押へて行く米の公定價格を上げたのだから賃銀、給料をも上ぐべきだといふので家族手當の問題が出て來た、家族手當は恒久的には出せぬが一時的には各省で出そうと論議された

    新政權問題 汪兆銘言中心とする新中央政權の成立は少し遲れるが準備は順調に進んでゐるから遠からず實現する我方と汪兆銘及びその周圍の人との間の話は大體既に濟んだものと思つてゐる

    日米問題 グルー米大使の言はれたことに就ては詳しく聞いてゐないから無條約狀態の時機が來ないであらうと言つたのかどうかは判らないが若し無條約狀態の時が來るにしても差當りすぐに日本に辛く當つて來るやうなことはないだらうといふ意味のことを言はれたのであらうと思ふ、揚子江の開放は既定の方針であつて十月頃に開放する筈だつたのが今まで遲れてゐたので別に對外的にはどうこう言ふことはない、日米間の通商關係が最惡の事態に立至つた際のことに就ては大いに研究してゐる然しそれは極めて望ましくないことであるから左樣なことのないやうに努力してゐる、交換條件といふやうなものはい、從來の條約の改むべきものは改めて現時の情勢に適應する樣にし便宜な處置を取あへず講じやうといふのである

    日ソ關係 日ソ通商交涉は豫定通り進められて行くやうだしノモンハン事件後の國境劃定交涉も豫定通り進みチタ及び哈爾賓で更に委員會を開くことになつてゐる【寫真は阿部首相】

    廣西省要地を猛爆 海鷲が大戰果を收む 頭條新聞

    【上海二十九日發同盟】艦隊報道部發表 南支方面戰況海軍航空部隊は二十六日より二十八日に至る三日間廣西省內左記各地を攻撃甚大な戰果を收めたり

    一、桂林で連日飛行場を猛擊同軍事施設多數を潰滅せり本戰闘中敵戰闘機十二機と交戰しその二機を確に擊墜せり

    一、柳州では飛行場格納庫及び附屬倉庫を爆擊その大部を破碎せり

    一、九塘、馬嶺墟附近では執拗に抵抗しつゝめりし敵地上部隊を爆擊これに大損害與へたり

    一、保平では敵彈藥庫に命中彈を得これを爆破炎上せしめたり